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PART
13
応用自然科学科 / 分析センター 「高分解能質量分析装置」
接合科学研究所 / 機械システム工学専攻協力講座 「EBSP装置」
地球総合工学科 / 地球総合工学専攻 「地球温暖化防止のための生態系二酸化炭素循環のモニタリングと制御」

 
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原子・分子の質量を測る最先端分析装置
物質を構成する原子や分子は、それぞれ質量を持っている。それを測定する装置が質量分析装置だ。原子や分子そのものの質量を直接測ることは困難なので、この装置ではまず原子や分子を気体状のイオンにし、真空中で運動させる。イオンの運動性はイオンの質量(m)と電荷数(z)によって異なるので、電場や磁場などの電磁気力を使いイオンを質量(比質量m/z)の差に従って分離させ、原子や分子の質量を測る。これらの質量を手がかりに分子の構造を知る、という装置だ。

現在最も注目を集めているナノテクノロジーやバイオ分野の研究において、この質量分析装置は欠かせない存在になっている。大阪大学工学部分析センターでも2003年に阪大フロンティア研究機構より、最高レベルの質量分析装置を導入した。物質のイオン化に高度最先端技術を搭載し、イオン化が困難であった物質も、高感度で高精度な測定ができるようになり、広範囲な研究領域をカバーし得る装置として、期待が寄せられている。担当の守口技官はこう語る。「一昨年、田中氏のノーベル賞受賞で、質量分析が脚光を浴びたこともありますが、現在、広範な分野で質量分析装置は活躍している。イオン化技術、装置の改良、構造解析技術など、今後も向上し続けるでしょう。」
<写真>守口寛技官


<写真> 高分解能質量分析装置
装置は5つの部分で構成されている。まず、試料を導入する部分、イオン化する部分、そのイオンを質量の差によって分離する部分、イオンを検出する部分、そして得られたデータを処理したり装置を制御するコンピュータ部分だ。この装置は性能の高さばかりでなく、拡張性に優れているのも特長で、今後、例えばもう1台同装置を直結したり拡張機器を装備したりすることで、より有益な分析情報を得ることも可能になる。すなわち、無限大の可能性を秘めた装置と言える。


この装置で、混合試料を直結したガスクロから導入すると、混合試料の成分の同定と定量分析ができる。特殊な測定法によれば、ダイオキシンをフェムトモル(10-15mol)オーダーで検出できる。また、水素原子の精密な質量は他の原子と比べて整数よりプラス側に大きく外れている。これに基づいて分子イオンの質量を精密(水素原子の質量の1000分の1の精度)に測定しデータ処理すると、分子の元素組成が求められる。元の分子の構造を維持したイオンだけでなく、不安定で壊れたイオンや強制的に分解させたイオンの質量も測定でき、有用な構造情報も得られる。ある生体関連物質の活性な水素原子の情報を得たいとき、処理前と、活性な水素を重水素で置換処理した後の試料を測定する。分子関連イオンの質量の増加分で活性な水素の個数が、分解して生成したイオンの質量の増加の有無で部分的に活性な水素の情報もわかる。これらを応用して、質量の変化から生命現象そのものをとらえることもできるので、生命科学分野の発展にも大きな力を発揮する。

分析センターには、毎日、工学部内のあちらこちらの研究室からこの装置を使っての質量分析の依頼が舞い込んでいる。近い将来、この装置から得られたデータが、新しい技術の開発の第一歩につながる日が来るだろう。
<写真>
軽油の質量スペクトル、混合成分の分子量分布と含有量(相対値)が容易にわかる
 

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より安全な社会を実現する、強い材料開発をめざして。
<写真>柴柳敏哉助教授
動植物が多くの細胞でつくられているのと同様に、金属やセラミックなどの材料もたくさんの結晶粒で構成されている。結晶粒とはいろいろな向きをもった結晶の集まりで、一個一個の結晶は原子が規則正しくならんでできていて、その並び方が物質によってそれぞれ違ってくる。

面白いことに、結晶粒は違う向きを持った別の結晶粒を自分と同じ向きに変えていく性質を持っている。隣の粒を占領して成長していくのだ。数十億という粒が生まれても、ある条件を満たした粒だけが、生き残り育っていく。すなわち、高い温度にさらすなど一定条件を与えることで、結晶粒をコントロールすることが可能なのだ。これが組織制御、と呼ばれる技術で、コントロールされた結晶粒による様々な材料が私たちの身の回りにも存在する。例えば、エネルギーロスの少ないエアコンのモーターの鉄心、あるいは軽くて丈夫なクルマのボディなどで、その技術は日本が世界に誇るもののひとつでもある。

結晶粒そのものだけでなく、材料の強度や機能に大きく影響するのが結晶粒同士の結合部分、粒界面だ。飛行機やロケットが壊れてしまうのは、結合力の弱い粒界面が原因となる場合が多い。そこで強い界面を持った材料をつくる、という研究テーマに取り組んでいるのが柴柳敏哉助教授である。
「これまで世界の工業製品の多くは、材料の結晶粒が小さいことが良いという考えのもとに作られてきました。しかしより強度の強い構造物を作るには、粒の小ささだけでなく、強い粒界を持った材料が求められているのです」と柴柳助教授。そしてその研究に不可欠なのがEBSP装置である。
「私たちの細胞にいろいろな遺伝情報が書き込まれているように、材料に様々なエネルギーを与えることで、将来、材料がどうなるか、という情報を書き込むことができ、さらにその情報をうまく読み出すという技術も可能です。そうした技術を活かして新材料をつくる研究を進めているのですが、その際、どんな情報を書き込めばいいのかを調べるのにEBSP装置が力を発揮します」。

装置自体はアメリカで開発されたものだが、アイデアは大阪大学・工学部独自のもの、すなわち柴柳先生のオリジナルだ。EBSP装置を使って、人間と同様に個々の材料が持っている組織情報を解読して、より強い材料、優れた材料を開発し、それら素材を接合していくのが柴柳助教授の研究の大きな目標だ。

1995年に発生した阪神・淡路大震災でたくさんの構造物が壊れ、多くの人が亡くなった現実を前に、工学に対する思いが更に強くなったと言う柴柳助教授。
「私たちの技術がこの程度のものだったのか、と思うと工学にたずさわる者として非常に恥ずかしかった。そして人が死なない構造体を作らなければという使命感を持ちました。安心・安全な社会をつくるための学問、最終的には人間を幸せにするための技術が工学だと私は思います」。柴柳助教授の熱い思いが、私たちの生活を安全に支える新しい材料開発へのエネルギーとなっている。
<写真>EBSP装置 <写真>摩擦攪拌接合により創出された結晶粒組織の空間的方位分布の色表示
 
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森林火災を最小限にくい止めて、地球を守る。
地球温暖化の原因として大きな問題となっている二酸化炭素。本来なら、生態系の中で吸収され、放出される循環の中でバランスがとれているはずだ。しかし、バランスを崩してしまう何らかの要因によって放出量が吸収量をはるかに上回り、地球の温暖化を引き起こしている。 そこで町村尚助教授らは、生態系の中での二酸化炭素の循環過程を測定し、バランスを崩す原因となる森林火災のような“かく乱”の影響や気候による変化を予測し、それらを制御するための手段を探る、という研究を行っている。

測定については、実際に生態系の中に入って、二酸化炭素の交換量を1年にわたって測定(モニタリング)していく。今現在観測を行っているのはシベリアの針葉樹林だ。ここに様々な測定機がついた観測タワーを建てて、二酸化炭素の濃度と風速、また気温・湿度、土壌の状態を知るための地温など様々なデータをとっている。
「世界的な観測のネットワークがあり、各国が協力して二酸化炭素の循環過程を観測しています。日本はアジア諸国やロシアと協力しながら、各国の熱帯林,北方林,マングローブ林などの観測を続けています」と町村助教授。現在は、かく乱による影響を調べるために、健全な森林と、森林火災で伐採された森林の2カ所にそれぞれ観測拠点を置いてデータをとっている。
<写真>町村尚助教授


<写真>二酸化炭素の循環過程を測定する観測タワー
1999年からスタートしたこの研究によって、衝撃的な事実がわかってきた。
「シベリア地域での健全な森林では、1m2あたり年間100gの二酸化炭素が吸収されることがわかりました、一方、かく乱によって森林がなくなった場合は1m2あたり年間300gの二酸化炭素が放出されているのです。すなわち森林が1年間で吸収する量の3倍の二酸化炭素が放出されていることになります」。この結果を森林火災が頻発している東シベリア全体で見ると、トータルで放出量の方が多いと予測される。広大な森林地帯においても、二酸化炭素が大量に放出されている事実。私たちの想像以上に地球温暖化は進んでいる。

二酸化炭素の循環については、植物の種類も大きく関与していると考えられる。そこで町村助教授は、竹に着目した研究を始めた、と言う。
「これまで竹はあまり研究の対象にされていませんでしたが、東アジアやアフリカなど世界各地に広がっている植物です。実は竹は木ではなく、草の仲間、非常に成長が早く地下茎がどんどん増えていくことから、二酸化炭素の出し入れが激しいと考えられます。そこで去年から予備的な測定を始めて、今後本格的に研究を進めていきます」。

これらモニタリングを重ねていき、最終的な研究の目標となるのは制御である。 もちろん、生態系を制御するのは非常に難しい。しかし、人為的なかく乱を防ぐ、あるいは落雷などの自然的なかく乱でも、被害を最小限にとどめる技術の開発は可能だ、と町村助教授は言う。「例えば人工衛星を使って森林火災をモニタリングし、すばやく発生箇所を突き止めて適切な防御をできるシステムを開発する。また、消火が難しい森林火災において、いかに延焼をくい止めるか、その技術を開発することもできます」。
現在シベリアでは、毎年北海道1個分に相当する面積の森林が火災によって焼失している、という。地球温暖化をくい止めるためにも町村助教授らの研究に期待がかかる。
<写真>
オフロード車で森林調査に向かう
 
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