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HOME > 研究 > 研究紹介 > 地球総合工学専攻|藤久保昌彦教授
地球総合工学専攻「船舶および海洋構造物の構造強度と安全性に関する研究」
頑丈そうな巨大船舶は実は超薄肉の容器その強度を分析する手法を開発し壊れ方も解明する 藤久保 昌彦 教授

巨大船舶は海に浮かぶ超高層ビルしかし中身は空洞で軽さが要求される

大海原を悠々と航行する巨大な運搬船。実に勇壮な風景だが、貨物や原油を運ぶそれらの船舶がどれほどの大きさかイメージできるだろうか。日本再高層を誇るあべのハルカスが300m、2番目の横浜ランドマークタワーは296mだが、巨大な船舶は全長300mを優に超える。高層ビルが横になって海に浮かび、しかも航行していると考えれば、そのスケールに圧倒されるのではないだろうか。

スケール感がつかめたところで問題だ。そんな巨大船舶の構造はどうなっているのだろう。さぞや頑丈にできていると思いきや、実は非常に繊細にできているのだという。デカいものを作ることに憧れて船舶の世界に入ったという藤久保教授が解説する。

巨大船舶は超高層ビルよりも大きなスケール。しかし軽さが求められるため、船体に使われる鋼材は巨体に比べてとても薄い。

「コンテナ船やタンカーなどは、ものを運ぶのが仕事。堅牢に過ぎれば、自重が重くなって積載量が減ってしまいます。そのため壊れないギリギリの線を狙って、できるだけ軽く作ることが求められます。あれだけ大きくても実態は空洞の容器で、板厚も全体の大きさからみれば、驚くほど薄いのです」。

ジュースのアルミ缶と比較するとよくわかる。アルミ缶の板厚は0.1mm。船舶に通常使われる鋼材は板厚20mmだが、アルミ缶と同じ大きさの断面に換算すると、5分の1の0.02mmしかない。実際、中央部だけに積み荷を積んだために、タンカーが真ん中から折れるという、巨大船舶の繊細さを表す事故も起きている。まして外洋の自然条件は厳しく、ときに30m級の大波が牙をむく。

船体が破断する致命的な事故を防ぐため構造強度を分析する工学的な手法を開発

しかも経済性追求の面から、近年、船舶はさらに大型化する傾向にある。藤久保教授は「船舶は1本の棒のようなもの」と形容する。同じ直径でも、短い棒より長い棒の方が大きくたわむように、船体も大きく長くなれば相対的に柔らかくなる。造船の歴史は長く、膨大な技術の蓄積はあれど、条件が変われば万能ではない。これまで着目していなかった要素やそこから生じる影響をしっかり視野に入れ、船体の強度を担保しなければならない。

そこで用いられるのがコンピュータシミュレーションだ。藤久保研究室は、『船体の縦曲げ崩壊強度に関する研究』で世界をリードしてきた。縦曲げ崩壊とは長さ方向に船体が折れ曲がってしまう崩壊をいう。壊れた箇所から亀裂が入り、浸水・沈没に至ることも多く、一度起こってしまえば致命的事故となる現象だ。その崩壊に至る強度を事前にシミュレーションできる解析法は、船舶業界にとって不可欠のものだ。

ただし、設計の現場で使えるものでなければ意味がないと藤久保教授は言う。

「数分で構造強度の評価ができて、リアルタイムに設計にフィードバックできるものであることが重要です。しかし、現象を詳細に再現しようとすれば、膨大な数値入力が必要で、スーパーコンピュータを使っても数日かかります。そこで重要になるのが工学的なアプローチによるシンプルな解析手法です」。

船体を1本の棒と見立てて最終強度を分析するシンプルな手法を開発。
想定外の事故を受けてその要因を解明分析法のバージョンアップを達成

工学的なアプローチとは何か。船体は大きく構造も複雑である。崩壊に至る過程では様々な変形が起こっている。その全てを丹念に追うことも大切だが、しかし、結局は何が原因で船体が折れたのか、その本質を押さえようという考え方だ。本質的な要素だけを取り出すことができれば、計算がシンプルになり、例えば1日かかっていた計算が1分でできる。それで大丈夫なのかと不安に思うかもしれないが、詳細な計算を行った場合とほとんど同じ解析結果となることが検証されている。

最新の研究では、2013年に発生したコンテナ船の沈没事故を受けて、解析手法のバージョンアップに取り組んできた。この事故は、これまでに想定していなかった要因で起こったと考えられ、業界に衝撃を与えたと言う。

「これまでは船体を1本の棒として扱い、それが全体として曲がることに着目していたのですが、それでは今回の事故の現象は説明できず、その原因を特定するのに試行錯誤を繰り返しました。そこで見えてきたのが船の底が局所的にたわみことの影響です。船の中は複数の部屋に区切られているのですが、大型のコンテナ船では、部屋ごとの底の曲がりが大きくなり、大きな曲がりと小さな曲がりが複合して結果的に壊れたのではないかというわけです」。

船舶の巨大化による新たな現象の発見である。何事も分かってしまえば簡単だが、それに気づき、証明するプロセスは大変だ。藤久保研究室では、局部変形を考慮した新しい解析法の普及に努めている。

2013年、それまで想定していなかった要因での沈没事故を受け、超巨大化した船舶に対応する新たな強度分析手法を開発した。
もしもの場合、巨大船舶はどのように壊れるのか世界中どこもやっていない学問領域を開拓

世界でまだどこも取り組んでいない先導的な研究も行っている。崩壊強度の研究は、壊れる限界を知ることで壊れないようにするためにあるが、それでも予期せぬ事態は起こるもの。であれば、もし崩壊したら、どう崩壊していくのかについても解き明かそうという、崩壊挙動についての研究だ。

「一瞬で壊れるのか、じわじわ壊れるのか、それは人命に関わる重大な問題です。しかし、これまでは壊れないように作っているのだからと研究されてきませんでした。しかし、リスク評価の観点から公共構造物全般に事故後の対策が求められるようになっています。船舶も例外ではありません」。

ただし、崩壊挙動を明らかにすることは、前例もなく困難だ。波を受けて船体は運動し、曲がっている。折れて、破断すれば各部に受ける荷重も漸次的に変化し、運動も変わる。こうした一連の複合現象を藤久保教授は新しい学問領域として『流力弾塑性=hydro-elastoplasticity』と命名。シミュレーション解析と単純化した模型による実験を組み合わせて挙動の特性を明らかにしようとしている。

船舶がどのように崩壊するかを検証するための実験模型。たわみや壊れ方が実際の船舶に近いモデルになるように、あらかじめ中央部で折れ曲がる機構を備えているのが特徴で、実際の船舶と等価な強度を持つ試験片を機構部に設置し、センサーで変形時の荷重が計測できるようになっている。
洋上風力発電や地球深部探査のための研究も推進海の構造物に関するサイエンスを追究

また、藤久保研究室では、船舶のみならず、洋上風力発電施設などの浮体構造物や、大深度海底掘削ドリルパイプの疲労強度などの研究にも注力している。洋上風力発電は再生可能エネルギーとしてこれからの発展が期待される分野であり、大深度海底は宇宙と並んで未開拓の分野だ。

「海に囲まれた日本にとって、海に関わる科学技術は日本の将来に関わります。船舶は成熟した技術にみられがちですが、運ぶ物も量も変わり、常に進化しています。国土の狭い日本にとって浮体構造物のニーズは高いし、メタンハイドレートなどの資源を海底から回収する際にも不可欠となるでしょう。深海開発もこれからです。そうした未来技術を厳しい自然環境下で達成していかなければならない。まさに若い人たちに担ってもらわなければならない分野だと言えますね」。

洋上風力発電施設や海上空港として利用が期待される大型浮体の構造設計ツールを開発。地球深部探査船「ちきゅう」に使われる海底掘削ドリルパイプの疲労寿命の予測も行っている。

藤久保 昌彦 教授 地球総合工学専攻

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