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生命先端工学専攻 「ゲノムに基づいた代謝の結果であるメタボロームを解析」
後天的形質も含めた生物の状態がわかる「暗号」それを代謝物から解析するのがメタボロミクス 生命先端工学専攻 福﨑 英一郎 教授

メタボローム解析とゲノム解析は車の両輪

福﨑研究室が研究テーマに掲げるのは「メタボロミクス」である。聞き慣れないかもしれないが、ポストゲノム科学の有望技術と見なされ、その価値にいち早く気付いた企業や団体から熱い期待が寄せられている。

メタボロミクスは聞き慣れない言葉かもしれないがゲノムは知っているだろう。ゲノムとは、ある生物をその生物たらしめる遺伝情報であり、いわば先天的に与えられた生物の設計図だ。既にヒトの全ゲノム配列は解読され、世界中の研究者によってその機能や役割の解明が大きく進んでいる。

ここで考えてほしいのが、高等生物になればなるほど、後天的に獲得した形質に大きく影響されるということだ。例えば、一卵性双生児のゲノムは全く同じはずだが、一方が60歳である病気になったとしても、もう一方も同じ病気になるとは限らない。むしろ健康でも不思議ではないだろう。どういう環境で育ってきたか、何を食べてきたか、運動やストレスの状態はどうだったか、生まれてからのヒストリーによって"今"の状態は刻々と変わるのだ。

そこでメタボロミクス(代謝物総体解析)である。メタボロミクスは、ゲノム情報に基づいて体内で様々な化学反応が実行された結果であるメタボローム(代謝物・化合物)を解析・応用する科学技術のこと。つまり、生物の有り様を正確に判断・予測するには、ゲノムとメタボロームの両方が必要であり、とりわけメタボロミクスはこれからの研究という点で注目度が高いのだ。

ゲノム情報が転写、翻訳過程を経て実行された表現型の一部である「メタボローム(代謝物総体)」を解析するメタボロミクス研究。ポストゲノム科学の有望技術とみなされている。

分析・解析技術の確立によってメタボロミクス研究が本格化

なぜこれからの技術なのか。それは分析・解析するための技術がなかったからだ。体の中には代謝物・化合物が、それこそ数万種類とある。それらを同時に素早く正確に計測し、種類や質量といった山ほどある生のデータから意味のある情報をいかに抜き取れるか。それはまさにエンジニアリングの世界であり、生物を材料とする「生物工学」の真骨頂と言えるだろう。

福﨑教授は、メタボロームは「暗号」のようなものだと言う。「例えばブドウ糖とグルタミン酸とクエン酸、この3つがあるかないかの組み合わせはたかだか10通り。しかし、それぞれ質量に1〜10までのレベルがあって、3:2:1の場合、5:3:5の場合は異なる暗号を表していると考えます。するとその暗号の数は膨大になり、さらに代謝物の数を何百種類ピックアップして暗号化するとしたら、それこそ無限大の組み合わせが可能。そういった暗号を持っているときの生物の状態を細かく調べていくと、例えば食道癌のステージ1の可能性が高いといった病気の診断に応用できるわけです。代謝物のパターンから病気の原因を推定することが可能になれば、お薬の開発にも使えるかもしれません」。

メタボロミクスの技術要素を支えるのは生物工学。生物工学とは生物学ではなく、生物を材料にしたエンジニアリングであり、社会ニーズに技術で応えるサービスサイエンスである。

医療分野のみならず食品産業の国際化にも貢献

ただし、世界中のメタボロミクス研究者の9割以上がメディカル分野での成果をめざす中、福﨑教授の一番の関心は他にある。それが「フードメタボロミクス」と称される食品工学への応用だ。その理由はこうだ。「家電や半導体など、かつて日本が世界を席巻した産業に元気がなく、すぐには巻き返せそうにありません。製薬分野も有望だが、膨大な時間がかかる。そこで今、海外に打って出る新しい産業として有望視されつつあるのが食品産業です。TPPで海外の安い食品が入ってきたら大変だと憂慮ばかりするのではなく、国際競争力のある食品もたくさんあるのですから、積極的に攻勢に出るべきです」。

メタボロミクスが食品産業にもたらす恩恵は、食品の品質鑑定、品質予測、品質を決定する要因解析、食品製造・保管工程の改善、品質保証システムの考案など多岐にわたるが、福﨑教授は「美味しさの追求も大切ですが、まずは今の品質を保ったままコストを下げることの方が、貢献度がはるかに大きい」と断言する。具体的には、ロジスティクス(保管・流通システム)の再構築だ。酸素を遮断して低温流通させている食品があるとする。しかし品質を決定する要因を解析したら、酸素を遮断していれば常温流通で問題なかったり、あるいは酸素より光を遮断した方がいいのかもしれない。温暖化ガスを排出する冷凍・冷蔵装置は環境にも優しくない。海外から原材料を調達するプロセスも改善できるだろう。

メタボロミクスでは通常、網羅性を優先するため、いかにして高解像度の分離分析系を構築するかが肝要となる。現状、「解像度」と「再現性」に加えて「堅牢性」,「経済性」を加味すると,最もユーザーフレンドリーな手法は、ガスクロマトグラフィー質量分析と考えられる。

メタボロミクスでアジアでの日本のプレゼンスを向上

研究テーマとは別に、福﨑研究室では、国際舞台で活躍できる人材育成に努めている。欧米との共同研究も盛んであるが、特にアジア圏での日本のプレゼンス向上とそのための人材育成をもっとも重要な国際教育の目標に掲げている。インドネシア、マレーシア、ベトナム、タイ、中国などアジア圏から優秀な留学生を多数受け入れるのも、研究の進展のみならず、日本の学部生、院生らと机を並べて勉強することで刺激を大いに受けてほしいと考えるからだ。福﨑教授は端的に言う。「経済が発展途上だからといって人間が発展途上だと考えるのはとんでもない間違い。留学生たちは、自国の政府機関や企業のキーマンとして未来を担う優秀な人材ばかり。

今後、日本のプレゼンスを高めるためにも、彼らとのパートナーシップを育んでほしいと思っています」。

また、「『教育のために研究をしている』という意識を常に持っている」とも公言する福﨑教授の研究室には、独自の教育システムがある。一例を挙げると、分析・解析に必要な技術の指導がある。マスターコースの院生は、学部4年生が研究室に配属されると必要なテクニックを教え、10月には留学生に対して同じ内容を英語で指導する。さらに12月には企業の研究者向けのレクチャーをする。繰り返し教えることで、教える側が育つ。そのように意識的にヒエラルキーをつくることで後輩の面倒をみる文化も定着。それはドクターコースに進んで博士号を取得するまで続く。

メタボロミクスという有望な研究と、研究者・エンジニアとしての技術や知見が着実に得られる教育。福﨑研究室で学ぶベネフィットは大きい。

アジア圏での日本のプレゼンス向上を視野にインドネシア、マレーシア、ベトナム、タイ、中国などから多くの留学生を受け入れる。

福﨑 英一郎 教授 生命先端工学専攻

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