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マテリアル生産科学専攻「アーク放電・プラズマを用いた材料加工プロセスを探究」
20000度の高温と閃光を発し、物質の4つの状態が混在するアーク溶接その複雑な現象を解明し形式知を構築する マテリアル生産科学専攻 平田 好則 教授

アーク溶接はモノづくり基礎技術の代表

知っているようで実は知らないもの。「溶接」はその最たるものかもしれない。金属と金属を接合する場合、溶接は、今では一般的に用いられる技術だ。船舶、航空機、橋梁、プラント、建築物、ロケット、実に様々なモノづくりの工程に利用されている。町工場でバチバチと火花を散らす様子を目撃したこともあるだろう。日本で溶接が最初に大型工作物に使われたのは1920(大正9)年、本格的に用いられるようになったのは第二次大戦を目前にした頃で、用途は運搬船やフェリー、そして艦船の建造だった。

それまでの接合工程における主流はリベット工法で、あの戦艦大和は溶接とリベットの両技術で建造されており、溶接技術の信頼性が向上する過渡期の工作物とも言える。

接合面の裏にあて板が必要で手間と時間もかかるリベットより、溶接は軽量化や省力化の面で勝る。接合面を熱で溶かして一体のものにしてしまう溶接は、硬い金属の接合に最適なのだ。

その溶接にはいくつかの方法があるが、現在、最も普及しているのは「アーク溶接」である。さて、ここで問題。アーク溶接の原理や仕組みを答えることはできるだろうか。

ゲノム情報が転写、翻訳過程を経て実行された表現型の一部である「メタボローム(代謝物総体)」を解析するメタボロミクス研究。ポストゲノム科学の有望技術とみなされている。

物質の4つの状態が10ミリ程度の範囲に同時発生

技術の核はアーク放電だ。アーク溶接は、金属材料(母材)とワイヤ(溶接棒)の間にアーク放電を起こすことで熱を発生させる。電源につながれた母材と溶接棒はプラスとマイナスの電極で、そこに電位差が生じることにより、電極間のギャップ(隙間)にある気体が電離してプラズマを生み出し、その中を電流が流れる。アーク放電中はギャップにある気体が励起状態になり、金属を溶かすほどの高温と直視できないほど眩しい閃光を発する。

大気中でアーク溶接を行うと、金属が溶融すると同時に酸化してしまうため、溶接棒にはお菓子のポッキーのようにフラックス(融材)がコーティングされ、熱で分解されたフラックスがガス化して溶接部をシールドする仕組みになっている。

アーク溶接を温度の面から見ると興味深い。プラズマガスは15000℃〜20000℃という太陽表面の温度を超える高温に達し、その高温にさらされる母材は、鉄の場合、その融点(1500℃前後)を超える2000℃以上に達している。

物質の状態も複雑だ。母材や溶接棒は金属で固体。溶接部の金属は溶けて液体。溶接環境は大気で気体だが、アーク放電で発生したプラズマガスは第4の物質の状態と呼ばれている。物質の4つの状態が10ミリ程の範囲に同時に発生する現象は非常に珍しい。

この数年、コンピュータ技術や計測技術、高速度カメラなどの可視化技術が著しく進歩し、溶接現象の数値シミュレーションのモデル構築及び、現実の現象との比較検討が行えるようになってきた。

アーク溶接は複雑な現象ゆえに未完成の技術

さて、ここまで説明したところで、平田研究室がアーク溶接を研究対象とする意義が見えてくる。平田教授が語る。「溶接技術は世界中で経済発展と国民生活の向上に重要な役割を果たしていますが、まだ完全な技術には達していません。なぜか。最大の理由は、溶接部が製品の一部として作り込まれるため、出来上がってしまえば溶接作業が正しく行われたかを検証することが難しく、欠陥があるかどうかを確認するには、放射線や超音波で非破壊検査をしなくてはならないということがあります。これは手間もコストも膨大です。

しかし、これほど便利な技術ですから、完全な溶接技術が開発されるのを待つことはできず、企業は現行の技術を進化させながら品質とコストのバランスを取っているのです。このような溶接技術の特異性をISO品質管理規格では「特殊工程」と呼んでいます。当研究室では、実験とシミュレーションの両面から研究を行い、アーク溶接の高度化に取り組んでいます。"検査フリー"で特殊工程を克服することを究極の目標としています」。

ここに示す図は、タンデムTIGアーク(2点同時溶接)の3次元数値モデル。撮影したタンデムアークの外観や、温度分布の計測結果と比較することでシミュレーションの精度・信頼性を検証する。

シミュレーションや実観察が可能に

技術の進化を阻んできた壁は、前述の通り、アーク溶接という現象の複雑きわまりない状態だ。この現象をシミュレーションするには、質量・運動量・エネルギーの保存式、さらにマックスウェル方程式に則って数値モデルを確立しなければならないが、変数の数が多く、温度が大きく変化するため、物性の温度依存性を考慮する必要があり、ようやくコンピュータで処理できるようになったのはこの10年ほどのことだ。つまり、これまでは実験的アプローチの繰り返しで暗黙知を高めてきたわけで、数値シミュレーションや高速度カメラによる可視化、高度な計測技術によって定量的に表現できる形式知の集積は、まさに始まったばかりだと言えるのだ。平田教授のテンションも高い。

「これまで現象が複雑すぎて、そのコントロールが不可能と考えられてきたアーク溶接のポテンシャルを一層高めることができる可能性が見えてきました。そのためにも、我々大学の研究者は、現実社会にフィードバックできる地道な基礎研究を引き続き行っていくことが肝要だと考えます」。

日本で始めて溶接工学科が設置された大阪大学は、今なお溶接工学の世界的メッカと言われている。モノづくりに直結する、工学部らしい研究をしたいならオススメだ。

平田 好則 教授 マテリアル生産科学専攻

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