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地球総合工学専攻「土木構造物の老朽化を防ぐライフマネジメント手法を開発」
“経験”と“勘”で行われてきた橋や道路のメンテナンスに確率論や数理統計を用いて、その意思決定過程をモデル化 地球総合工学専攻
貝戸 清之 准教授

インフラの補修や更新が国家的な課題に

2012年12月、中央自動車道上り線・笹子トンネルの天井板が崩落し、多くの犠牲者を出す痛ましい事故が発生した。複数の要因が絡んでの事故ではあるが、構造物の劣化が1つの要因であることは間違いない。橋やトンネルのコンクリートが剥落するなど、インフラ(社会基盤施設)の劣化に関するニュースも増えている。橋梁、道路、トンネル、上下水道などの多くが、1960〜70年代の高度経済成長期に建設されたものだ。それらが半世紀を経て、いっせいに老朽化してきている。笹子トンネルの事故以降、老朽化対策として補修・補強・更新の必要性が叫ばれるようになった。国もその重要性を認識し、予算を割いている。

しかし、予算さえ準備すれば問題は解決するのか。国や自治体の予算には限りがある。膨大なインフラに対し、施工も一斉にできるわけではない。では、どうするのか。

土木構造物の持続可能性に関する戦略・戦術を、社会性、経済性、あるいは環境などを評価軸としたマネジメント論により探究する。劣化試験等の力学的な実験ではなく確率論や数理統計学を用いるところが新しい。

メンテナンスを実施するには「意思決定」が必要

その現実的な解を出すのが「社会基盤マネジメント学」を探究する貝戸研究室。土木構造物を中心とするインフラを取り巻く様々な意思決定問題を主たる研究テーマとしている。“意思決定問題”とは何か。橋や道路を管理する国や自治体、高速道路や鉄道の運営会社が、どういう優先順位で、いつまでに、どの程度の予算をかけてメンテナンスを実施すればいいのか、それをどのようにして決めるのかという問題だ。劣化が進んだものから順番に行う?もちろん正しい。では、劣化の箇所や進行の程度を把握するにはどうするか。ここで理系の人間が陥りがちな答が、センサーなどを使った計測、あるいは模型を使った実験で劣化の進行を予測するという方法だ。しかし、土木構造物はとてつもなく大きい。

土木構造物のインフラを長期間にわたって維持活用するライフサイクルマネジメントは人々の生活や経済に関わる重要課題。点検データなど現場にある「情報」を貴重なデータとして着目したことで、実験に頼らない新しい工学の世界が開けた。

どんなセンサーを、どこに、いくつ設置すればいいのか。数多くの構造物の内部を非破壊で検査するのも現実的ではない。

目視による定期点検の報告書に着目

「実は、とても役に立つデータが既にあるんです」。貝戸准教授は自信を持って言う。貝戸准教授の経歴は少しユニークだ。土木工学を学んだ後、民間のコンサルタント会社に就職。橋梁などの過酷な現場で点検作業を行った経験を持つ。当然のことだが、各構造物は、その維持のため、定期的に点検が実施されている。「経験豊富な点検員は、見ただけでおおよその劣化具合がわかります。臭いで何かがおかしいと察知する人もいて、実際に錆びていたりするんです」。その点検結果は、通知簿と同じように5段階評価などの形で記録される。

貝戸准教授はこのデータこそお宝だと注目した。「しかし、目視による点検データなどは客観的でも、定量的でもなく、重要なデータではないとされ、当時は見向きもされませんでした」。しかし、現実にはこうした現場のデータをもとにメンテナンスは実施されているわけで、管理者の投資行動のベースになっている。そこで発憤。「目視点検データによってインフラのライフサイクルマネジメントに資する研究ができるはずだ」と誰もやっていない研究に着手した。「つまり、従来“経験”と“勘”で行われてきた意思決定に対して、確率論や数理統計を用いて、経験と勘の視覚化を行うと同時に、意思決定過程のモデル化を手掛けているわけです」。

土木構造物の健全度は時間が経過するに従って下がってくるが、その程度は様々な要因によって一定ではなく、構造物の部位によっても異なる。現場の「経験」と「勘」に着目することで、それらをトータルに捉え、最適なライフサイクルマネジメント手法を見出すことが可能となる。

土木構造物だけでなく金融や保険もインフラ

劣化の進行と予算の投入。そのバランスをどう取れば、ライフサイクルを長くでき、トータルの費用も抑えられるのか。一見あいまいに見える点検データを数値化することでシミュレーションを可能にし、ベストな解を求める。研究成果は広く認められるところとなり、国や自治体、NEXCO西日本、阪神高速道路、鉄道総合技術研究所などと連携した共同研究も進められている。「この研究の醍醐味は、現実に起きている事象を数式で表現していくところにあります。当然、わからない変数が入ってきますが、それを現場にある情報やデータなどで埋めていく。そして、できたモデルで現実の事象を説明しきれているかを検証する。ひらめきやアイデアが必要ですが、それは勉強や訓練で身につけることができます」。面白いのは、この学問が土木構造物に限らず、金融や保険、教育などの分野にも応用できること。「公共政策もソフトなインフラです。そういうところも含め、日本の将来を背負っていく人材を育てているつもりです」。

国や自治体、企業との共同研究の多い貝戸研究室では、ミーティングやディスカッション、プレゼンテーションを通じて、実社会で通用するビジネスの知識や社会人としての姿勢も培われる。

貝戸 清之 准教授 地球総合工学専攻

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