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ビジネスエンジニアリング専攻「磁性材料、ナノ粒子材料の創製および放射線構造解析」
ありふれた磁石から医療用の磁性ナノ粒子まで、原子の並びを解析しながら材料を革新する ビジネスエンジニアリング専攻 中川 貴 准教授

電力の6割はモーターを回している

日本の電力は何に多く使われているかご存知だろうか? 実は6割がモーターを動かすことに使われているというデータがある。考えてみれば私たちの生活を支える電化製品にはたくさんのモーターが使われている。冷蔵庫の冷凍サイクルを回しているのもモーターだし、エアコンのインバーターにもモーターが入っている。モーターの主要部品は磁石だが、一般的なモーターに用いられるのは、ネオジム磁石のような高性能磁石ではなく、みなさんご存知のあの黒いフェライト磁石である。中川准教授はこの“ありふれた磁石”の創製を研究テーマの一つにする。

「ありふれているからこそ意味があるのです。全てのモーターの性能をほんの1%向上するだけで、原発1基分の電力が削減できるという試算もあります。量産品であるフェライト磁石の構造や作り方を見直すことで1割でも性能が向上すれば、その波及効果は大きく、省エネ・省資源化に貢献できるのです」。

私たちのまわりにはモーターがたくさんあり、その中の磁石の性能が向上すれば省エネ・省資源につながる。
ありふれた磁石が世の中を変えるかもしれない

あまりに身近過ぎてサイエンスとしてはあまり注目されていない分野だが、意外なことに基礎的な知見がほとんどないのだという。フェライトは偶然発見されるやいなや工業化が先に進み、製品として確立してしまった。結果として使えるものが作れたから、「なぜそうなるのか」という基礎がなおざりにされてきたのだ。

「今さらフェライト磁石?という人もいますが、持続可能な社会を目指す今だからこそ、基礎から見直すことがで大切で、工夫や改善の余地が大きいかもしれないのです」

フェライト磁石を構成する元素は、鉄やストロンチウム、コバルト、マンガンなど。それらがどんな組み合わせで、どんな構成比で、どんな構造をしていれば、どの程度の磁力が得られるのか。より大きな磁力を発生させるためのキーテクノロジーは何なのか。解明すべき点は多い。

放射線を使い原子レベルで物質の構造を解析

そこで威力を発揮するのが、中川先生のもうひとつの研究テーマである、放射線を活用した物質構造解析だ。

「当研究室は元々原子力工学から派生していて、放射線活用の知見と経験が豊富なのです。放射線を使えば原子の位置を特定し、物質の結晶構造を明らかにすることが可能です。当研究室では、最もポピュラーなX線回折を使った分析に加え、中性子回折による分析法、さらに材料を構成する元素のX線の吸収率を測定するXAFS(X線吸収構造微細解析)の3つの分析手法を駆使し、区別・特定の難しい原子についても結晶中の状況をきっちり見積もるということを行っています」。

中性子回折や放射光X線を利用したXAFSなどを行うため、大型放射光施設(SPring-8)や大強度陽子加速施設(J-PARC)を利用した実験も実施。得られた貴重なデータを慎重に分析することでフェライト磁石の“なぜ”を一つ一つ解明している。こうして得られた知見があってこそ、新たなフェライト磁石の創製も可能になるのだ。

超電導リニアの磁性材料や燃料電池のための触媒も研究

中川准教授の研究テーマはさらに展開を見せる。「磁性材料創製」と「物質構造解析」を2本柱に、扱う材料が広がっている。1つは、冷凍機のための磁性材料の合成だ。あまり知られていないが磁性材料は蓄冷材料として冷凍機に応用できる。山本・中川・清野研究室では希土類窒化物がこれに適していることを世界で始めて見出したが、その実用化研究として、エルビウムやホルミウムの窒化物を合成。絶対零度近傍に磁石の性質が変わる磁気転位温度を設定することで、小型で冷凍能力の高い冷凍機が実現できれば、超伝導リニア新幹線への搭載も期待できる。

物質構造解析では、エタノールを分解して水素を取り出す触媒として期待される複合ナノ粒子材料の構造を分析、触媒活性向上のための条件を探る。これは燃料電池の汎用化につながる研究だ。

山本・中川・清野研究室では、清野准教授が放射線を利用した合成手法を使ってナノ複合粒子材料を創製。構造解析を中川准教授が担当している。
磁石でがんを治療する、そんな未来医療も研究

もうひとつ、注目すべき研究がある。「磁気ハイパーサーミア」という新しいがん治療のための医療用磁性材料および磁場発生装置の研究だ。磁気ハイパーサーミアとは、がんの患部に磁性ナノ粒子などの磁性材料を挿入し、外部から高周波磁界をかけることによって磁性材料を発熱させてがん細胞を死滅させようという未来の治療法。一定の温度で急激に磁性が失われる磁石の性質を利用したもので、ヒトの細胞が死滅する42℃より少し上で磁性が失われれば、健康な細胞への影響を抑えながら、がん細胞のみを殺すことができるというわけだ。特徴的なのは、磁性材料と磁場発生装置をセットで研究していること。そういう研究室は国内でも他に例がないらしい。

「医療に使うものですから安全性がとても重要で、そのためには磁性粒子と磁場発生装置の両面からアプローチし、人体に影響しない理想の条件を見つけなければなりません。当初は磁性材料のみを研究していたのですが、必要と判断し、本当は専門外なのですが装置の研究も始めました」。

以上のように研究テーマは多いが、貫かれているのはあくまでも「磁性材料創製」と「物質構造解析」だ。まだない材料を自分たちで合成して、自分たちで分析して、自分たちで特性も調べる。必要なら装置もつくる。分子レベルから材料創製を学びたい人には理想の環境と言えるだろう。

磁性ナノ粒子など医療用の磁性粒子材料を合成。磁界により発熱する磁性粒子ががんを死滅させる。 実験段階の磁場発生装置。フェライト筐体を用いることで磁気を閉じ込め、効率よく強い磁場を均一に発生する。

中川 貴 准教授 ビジネスエンジニアリング専攻

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