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HOME > 研究 > 研究紹介 > 電気電子情報工学専攻|牛尾 知雄 准教授
電気電子情報工学専攻「気象災害の軽減を目指したリモートセンシング技術の利用」
ゲリラ豪雨や竜巻など突発的気象現象の発生を いち早く捉え、災害を最小限に食い止める 電気電子情報工学専攻 牛尾 知雄 准教授

今の気象レーダではゲリラ豪雨や竜巻は観測できない

今年(2012年)5月、河崎研究室のある研究棟の屋上に世界最速の気象レーダがクレーンで吊り上げられ、白いレドーム(アンテナを覆うカバー)とともに設置された。河崎研究室は、雷の研究で世界的に高名な河崎善一郎教授が率いる講座で、電磁波による地球環境のリモートセンシング(人工衛星観測を含む)技術に関する研究およびその技術を用いた気象観測、シミュレーションなどを行っている。新たに設置された気象レーダは、従来の気象観測システムの欠点を補うべく、まったくのゼロベースから開発されたもので、既存の気象レーダとは開発の思想から大きく異なる。

プロジェクトリーダーの牛尾知雄准教授が説明する。「気象庁のホームページをご覧になると、レーダで観測された全国の5分毎の降水強度分布が表示されています。これは全国を20台ほどの大型気象レーダを用いて観測したものです。1つのレーダで広域をカバーできるという利点がある一方、レーダから遠くなるに従ってビームが拡散するために分解能が劣化し、地球の曲率に伴って地表面付近の観測ができなくなるという欠点があります。当然、高速スキャンニングも難しく、一定の間隔でしか観測できません。つまり、ゲリラ豪雨と呼ばれる局所的な突然の豪雨や、発生から消滅までたった数分しかない竜巻を観測するには、時間的にも空間的にも無理なシステムなのです」。

レドームの中の納められたフェーズドアレイレーダ。世界最速のスキャンニングが可能な気象レーダで、ゲリラ豪雨や竜巻の観測が可能。まだ世界にこの1台しかない。

短距離型の高速高分解能レーダの多数配置を提案

2008年の夏、川で遊んでいた幼い子どもが突然襲ってきた濁流に流された神戸の事故を覚えている人もいるだろう。今年5月には、つくば市で巨大竜巻が発生し、多くの建物が倒壊した。牛尾先生の脳裏にはそうした気象災害の場面やニュースが刻まれ、研究への強いモチベーションになっている。では、どうすれば、ゲリラ豪雨や竜巻などの突発的局地現象を観測できるのか。牛尾先生の出した答は「短距離型の高速高分解能レーダの多数配置」だ。観測できるエリアは小さいが、より高精細にリアルタイムで観測できる気象レーダを網の目のように分散配置し、最新の情報通信技術でネットワーク化すれば、全体として超高性能大型レーダとみなすことができるというわけだ。

フェーズドアレイレーダのコントロールユニット。レーダが捉えた大阪大学吹田キャンパス周辺の積雲の様子が捉えられている。

屋上に設置されたのはその第1号。構想から6年をかけてついに完成したフェーズドアレイレーダである。電子的にビームの方向を切り替えることで、降雨の構造を3次元的に素早く見ることができる。プロジェクトは、第2フェーズである実証実験の段階に突入した。「実機を製作する以前に、自分でプロトタイプを作って実験したのですが、それでも非常に細かく降雨や竜巻の構造を観測することができ、その像を気象学会などで発表すると会場がどよめくほどのインパクトがありました。設置したフェーズドアレイレーダはさらに高性能。局地的豪雨や竜巻のいち早い検出を可能にし、予知にも結びつくと期待しています」。

今の気象レーダではゲリラ豪雨や竜巻は観測できない

牛尾先生はゲリラ豪雨をもたらす積雲を「豪雨の卵」と呼ぶ。高速高分解能レーダなら、卵の発生を即時にキャッチできる。地上に雨粒が到達するまでには10分弱の時間があるため、素早く警報を出せば避難も充分に可能だ。研究が進めば、豪雨の卵が生まれる予兆現象まで捉えられるかもしれないのだ。牛尾先生の計算では、日本全国をカバーするには高分解能レーダが1200台必要ということだが、1都道府県に平均25台と考えれば意外に現実的ではないか。

フェーズドアレイレーダと同時に高帯域レーダも開発。高帯域レーダは、従来のレーダより高い周波数を用い、ブロードバンド化によって高い分解能を実現している。 高帯域レーダを用いて山形県庄内空港で冬期のシビアな気象現象を観測したところ、突風竜巻に伴う渦状構造の高分解能なデータを取得できた。

さらに牛尾先生は、世界にも目を向けている。「日本は国土が狭いからこのシステムがそのまま有効ですが、中国やロシア、アフリカなど広大な国ではどうかと考えると、人口密集地には、この多数分散型ネットワークを構築し、人のあまり住んでいない地域は人工衛星からの観測でカバーするという方法も考えられます。また、アメリカと日本では、降雨や竜巻の構造が異なることが研究で明らかになっていますが、アフリカもきっと違うはずだし、被害はもっと深刻でしょう。そういった地域ではどのような観測システムが適しているのか、その研究はまだこれからです」。

電磁波が発見されたのは放電からで、電磁波と自然は切り離せない関係にある。故に電波を使ったリモートセンシングは、地球環境のあらゆる観測に相性のいい技術だといえるだろう。「気象観測も奥が深いけれど、この領域には面白いテーマがいくらでもありますよ」。実際、牛尾先生は国際宇宙ステーション「きぼう」の雷放電および高高度発光現象の観測を行うミッションのリーダーも努めており、時代の先端を行くテーマをいくつも同時に進めている。間違いなく、チャンスの多い研究室だと言えるだろう。

牛尾 知雄 准教授 電気電子情報工学専攻

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