今回の実験は「バイオエタノールをつくる」という内容です。バイオエタノールという言葉は、ニュースなどで聞いたことがあるかもしれませんね。バイオマスから作りだすことができるエネルギーのひとつです。バイオマスは再生可能資源であり、石油に変わるものとして注目を集めています。また、エネルギーだけでなく、製薬や化学工業などへの幅広い分野への応用が期待されています。

研究室での実験は、白衣を着用して行います。今回の実験は、危険な試薬は使用しませんが、研究内容によっては毒性のあるもの、あるいは過激な反応を示すものを使用することもあるからです。高校で行っている理科の実験との、まず大きなちがいはそこにあるともいえるでしょう。この実験教室では、そんな「大学ならでは」の雰囲気、実験の進め方を体験してもらい、大学に進学した自分がイメージがしやすくなれば、と思っています。

実験を進めている間は、メガネも着用します。万が一、急激な反応で液体が飛び散って眼に入ったりといった危険を避けるためです。大学では、学生がそれぞれ自分の研究テーマを持って、それに沿った実験の計画を立てていきます。その計画に沿って、各自が実験を進めます。安全に実験が進められるかは、自己責任。これも全てを先生が用意してくれ、あらかじめわかっている結果を確認するために行う高校の実験とはちがうところですね。

実験装置も高校の理科室にあるものとはずいぶんと形も性質も違います。これはピペット。ピペット自体は高校の理科でも使用していると思いますが、写真のものはさらに正確に液体が測れるようになっています。ちなみにメモリはμl(マイクロリットル)。1ccの1000分の1の体積になります。それだけ微量の液体を測るので、吸い上げ・吐き出しを行うピペットの先端のチップは、液体が残らないよう毎回使い捨てにしています。

では実験を開始しましょう。まずはピペットに慣れましょう。今回使う液体はわずか50~400μlと、非常に微量です。慎重で繊細な扱いが求められます。試薬を正確に扱えなければ実験が失敗してしまうことだってあります。まずは2種類の反応液を作っていきましょう。ひとつには酵素が、もうひとつには超純水が入ったマイクロチューブをつくっていきます。それぞれふたつずつ用意しましょう。その後、双方にグルコース溶液を加えます。

グルコースとは、糖のことです。名前は生物の授業などできいたことがあるのではないでしょうか。糖は動物や植物が活動をするのに欠かせない物質です。酵素とグルコースが反応すればエタノールが生成されます。超純水とグルコースは反応をしませんから、グルコースが残ることになります。それを確かめるため、最後にエタノールとグルコースそれぞれに反応する測定液を加えます。そのために、それぞれふたつずつ用意するわけです。

反応液ができたら、50℃の恒温槽に入れて反応させます。このまま約50分おいておきます。そうするとグルコースと酵素が反応し、エタノールが生成されるのです。写真の装置が恒温槽です。読んで字の通り、一定の温度を保つための機械です。このように実験のためのさまざまな装置が研究室には設置されています。数多くの試薬が取りそろえられていたり、動物細胞が液体窒素でマイナス196℃で保存されていたりもするんですよ。

所定の時間が過ぎたので、恒温槽から反応液を取り出します。正しく実験装置を扱う、正確に試薬を計量する、といったことに加えて、「時間に正確である」ということも大切です。早すぎても遅すぎても反応がうまくいかず実験は失敗します。中には何時間、何日間も要する実験や研究もあるわけですから、時間に正確であることは非常に重要な素質といえるでしょう。大学生になれば、その点もまた自己責任、ということになります。

酵素にグルコースを加えたもの、超純水に加えたもの、それぞれにグルコース測定溶液を加えます。まずは試験管に溶液を移し、そこに測定液を加えます。機械を使うと効率よく混ぜることができます。同様にエタノール測定液もそれぞれに加えていきましょう。緑と赤の液体が反応し、色が変化していく様子を見ることで、エタノールが生成されたか、グルコースが残ったままなのか、あるいは反応してなくなったのかを知ることができます。

液の色が違うのが分かります。つまり、エタノールが生成されたことが確認できた、ということ。実験は成功です。今回はすでに結果がわかっていることを、確認する「実験」でした。大学で行っているのは「研究」です。これは答えや結果のわからない作業です。知識や情報を活かして、結果を予想して挑みます。未来を変えるような大発見があるかもしれません。大変だけど、自分次第でやりがいも感じられる。それが大学での学びなのです。