「新素材の炭素繊維を機体の構造材に使った飛行機が注目を集めているよね。
話題の燃料電池も基本は化学反応だよね。
まったく新しい素材や機能を生み出すのは、やっぱり「化学」のチカラ。
さあ、見学に出発だ!

あらゆるモノづくりに必要不可欠であり、研究開発を基盤からリードするサイエンス、それが「化学」です。物理学、生物学を含む全てのサイエンスが原子・分子レベルから見直されている現在、「化学」が培ってきた知見と技術は、医学・薬学から材料、そして環境・エネルギーまで、実に幅広い分野の発展の鍵を握っているといってもいいでしょう。異なる分野を結びつけ、新しい発想・発見を導くのも「化学」が"The Center of Science"であり、全ての分野に「応用」されているからです。

応用化学科目では、工学的(モノづくり)な視点に立った化学全般に関する基礎知識と幅広い教養、グローバルな視点から化学を基礎とする最先端科学技術を総合的に俯瞰できる洞察力を身につけます。
重点分野に位置付けているのは、〈マテリアル化学〉〈環境・エネルギー化学〉〈生命化学〉の3つの研究分野。研究室配属後は、新素材の創成や物質変換の新方法の確立、資源・エネルギーの超高感度利用、高性能エレクトロニクス材料の開発、医薬品や医用材料の開発など、先端的な研究に取り組みながら、次世代を担うChemistry scientistを育てます。


生化学の発展とゲノム解読の進行により、生体内での情報伝達物質やその物質を認識する分子が次々と同定されるようになった。そして今はポストゲノムの時代。次の目標として、生理的条件での機能の解明が求められている。ただし、これまでの生物学では、動物を解剖したり、細胞をすりつぶしたりして生体分子の機能を調べていた。動物や細胞を生きたまま調べることができなかったからだ。

そこで注目すべきが、菊地研究室がテーマとする「ケミカルバイオロジー(Chemical Biology)」。狙った生体内分子を捉えて、蛍光の強さや色調が変化する化合物をデザイン・合成し、生物学研究に応用している。今、手にしているのがその化合物の水溶液で、標的分子を加えて紫外線を当てると強い黄緑色の蛍光を放つ。自分で構造式を設計した化合物ができると、ここにある蛍光光度計で化合物が放つ蛍光のスペクトルを測定するのだが、予想通りの物性を示したときが研究者の最も興奮する瞬間だ。


タンパク質は、生体の様々な機能を担う物質だが、その複雑な形と大きな分子量ゆえに、長い間、中身がよくわからないブラックボックスとして扱われてきた。しかし、近年、構造生物学と分析機器の発展により、その構造や物性が明らかになってきた。つまり、タンパク質も一般の「分子」と捉え、手を加えることが可能になってきたのだ。そこで林研究室では、機能を有するタンパク質を、

有機化学の立場から分子レベルで改変し、高機能性材料として活用することをテーマに研究を積み重ねている。例えば、タンパク質内の天然のヘムを非天然の機能化ヘムに置換することにより、著しく機能を高めることができれば、環境に優しい生体材料(触媒・センサー・医薬品など)の開発につながる。今、目の前にある原子間力顕微鏡は、タンパク質の集合体を先端が数ナノメートルという超微細プローブ(針)でなぞることで直接観察できる超優れもの。分子を扱う研究には欠かせない装置だ。


私たちの体の中では様々なタンパク質が働いている。例えば、ヘモグロビンというタンパク質は酸素を運び、アミラーゼ、リパーゼなどのタンパク質は食べたものを消化する。また、病気のときには、あるタンパク質が働き過ぎている場合が多く、そのタンパク質の働きを止めることができれば病気を治せる。では、どうすればタンパク質の働きを止められるのだろうか?

タンパク質の形を見て働きを止める鍵穴を見つけ、その鍵穴にピッタリはまる鍵(化合物)を設計してやればいいのだ。しかし、タンパク質は数ナノメートル程度ととても小さいため、通常の方法では見ることができない。そこで登場するのが「X線結晶構造解析」という手法。ここにあるX線発生装置を使うことでタンパク質の形を見ることができるのだ。井上豪研究室では、タンパク質の形・構造を解析し、その機能を明らかにすることで、これまでにない医薬品の開発につなげようとしている。


まず知ってほしいのが、様々なプラスチックをはじめ、世の中のあらゆるものが石油由来の有機化合物からできているということ。石油から有機化合物をつくり出す手法を「有機合成反応」という。つまり、新しい反応を開発できれば、新しい材料ができるってわけ。例えば液晶分子もそうだ。ノーベル化学賞を受賞したクロスカップリング反応が開発されたからこそ、液晶分子ができ、

今の液晶テレビの普及がある。そういった新たな合成手法の研究を行っているのが安田研究室。地球上に豊富に存在する金属の特性を生かして、これまでにない反応の開発を行っている。ここにあるグローブボックスは、そのための実験装置の1つ。新しい反応には高活性な金属触媒の開発や反応中間体の分光学的分析が欠かせないが、金属触媒や反応中間体は空気中の酸素や水分に敏感なため、この中は窒素ガスに満たされた不活性雰囲気になっていて、グローブを通して作業できるようになっている。


生越研究室では日々の生活を支える様々なもの、例えば医薬品やDVD、ペットボトルなどの製造に欠かせない新しい「触媒」の開発に取り組んでいる。触媒は実に不思議な存在だ。他の物質の化学反応を促すけれど自分は変化しない。しかし、触媒なしではいくら原料を全部揃えてもほしいものは一切できないのだから、マジシャンのようなすごい存在なのだ。

生越研究室は、そんな触媒が、何からできて、どんな形をして、どのように働いているか、正体を解明することにとことんこだわり、新しい触媒によるこれまでにない反応を研究しているのだ。その研究に大きく寄与しているのが、この超臨界流体クロマトグラフィーという最新の検出装置。新しい反応から得られる化合物がいつも単一とは限らず、混合物となることがあるが、そんなときはこの装置を用いると、混合物が短時間で各成分に分離される。右手と左手のような鏡像関係にあるキラルな化合物もたやすく分離可能だ。

応用化学科目は、応用自然科学科の1科目です。応用自然科学科に入学した学生は、1・2年次に工学基礎の専門的な知識と自然科学についての幅広い教養を身につけますが、2年次から応用化学科目を含む4つの科目に分かれて各専門分野の科目を履修していきます。この科目分けを「分属」といい、学生は行きたい科目を選択しますが、1年次の成績が考慮されるため、希望の科目に確実に進むためには、しっかり勉強しておかなければなりません。

応用化学科目に配属された学生は、2年次・3年次において、研究者・技術者として必要な基礎化学の知識を習得するための講義・演習・実験科目を履修し、4年次に26の研究室に配属され、化学の世界をより深く理解しながら、卒業論文をまとめるための研究に取り組みます。これらの研究室のうち、4研究室は生命先端工学専攻(化学系)に所属しており、応用化学専攻に所属する22研究室は、分子レベルで化学反応を自由に制御することに主眼を置いた「分子創成化学コース」と、原子・分子の集合体である物質の持つ様々な機能の探究に主眼を置いた「物質機能化学コース」から構成されています。さらに配属の希望を決める時期には各研究室のテーマや雰囲気を知るための「ラボツアー」が行われます。
学部卒業生の9割以上が大学院に進学して研究活動を継続しています。

応用化学科目及び応用化学専攻の卒業後の進路は実に多彩です。それは化学という学問領域が持つ万能性、汎用性に起因します。例えば近年、話題となった炭素繊維の旅客機用構造材、水素燃料電池車、青色発光ダイオード、太陽電池、リチウムイオン電池、エボラ出血熱新薬、高精細ディスプレイ、自己再生塗料、低燃費タイヤなどなど、扱う業種や企業は様々ですが、いずれも化学を専門とする科学者がいなければ実現できなかったものばかりです。つまり、全てのモノづくりにおいて材料・素材づくりは重要で、原子・分子・ナノレベルから材料・素材の性能や機能にアプローチできる化学者は、まさに引く手あまたの状態。多くの卒業生が科学立国ニッポンのモノづくりを基盤から支えています。

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