「環境」も「エネルギー」も社会を持続させるための重要なキーワードだね。
その両分野を表裏一体のものとして同時に学ぼうよっていうのが
環境・エネルギー工学科ってわけ。さっそく見学に行ってみよう!

私たちの暮らしを支えるエネルギーは、その多くを化石燃料に頼っており、結果として温暖化ガスや大気汚染などの問題を引き起こしています。様々な製品の元となる原材料を作ったり、それを加工・流通・消費する過程でも川や海を汚したり、多くのゴミを排出したりと環境に影響を与えています。

つまり地球規模の観点から捉えれば、エネルギー問題と環境問題はつながった一体の現象といえます。そこで大阪大学では、持続可能な社会の実現に向けて、エネルギーの供給側とそれを利用・消費する過程で生まれる環境問題の双方から工学的にアプローチしていこうというねらいで環境・エネルギー工学科を2005年に誕生させました。

前身である環境工学科、原子力工学科も、共に時代に先駆けて開設された歴史ある学科であり、日本を代表する個性的な研究者・指導者が集結しています。
福島の事故後だからこそ原子力をはじめとするエネルギー関連の研究はよりいっそう重要度を増しており、環境問題に関しても、日本の経験や知見をベースに新興国の現状に合わせた解決方法が求められています。世界が、これからの環境・エネルギー問題を解決するリーダーを待っているのです。


矢吹研究室では、環境を構成する人間・人工物・自然などの関係を総合的に設計する環境デザインに先進的な情報通信技術(ICT)を応用した環境デザインシステムの開発及び環境そのものに ICT を埋め込んだ新しい環境の創造に関する研究を行っている。今回、体験してもらうのは、VR(Virtual Reality)技術と、クラウドコンピューティング技術を融合させた「クラウドVR」。

グローバル化の時代に、人々が物理的に集まって会議をすることが難しくなってきている課題を受け、産学共同研究の中で開発を行っている。街づくりをテーマにした遠隔会議などで、3次元仮想都市空間を共有できるのが特徴で、フリーハンドスケッチで描き込みながら、世界中の人々と議論を深めることができる。もちろんタブレットでも使用可能。既に米国・欧州・アジアと研究室を結んだ実験を行っているんだ。


池研究室では、微生物や植物など、生物の力を利用した環境保全・浄化技術や資源・エネルギーの回収・リサイクル技術の開発を行っている。その中で、今もっとも注目されているのが、水生植物と微生物の共生系を活用した環境浄化技術の開発だ。具体的に何かというとそれは「ウキクサ」なんだ。ウキクサは、赤潮や富栄養化の原因になるリンや窒素を水から吸収しながら育つ。

そのウキクサの根っこに特殊な微生物を共生させると、微生物の助けによってウキクサ自体の成長が2倍や3倍にも促進され、その分だけ環境浄化速度もアップするんだ。ウキクサは光エネルギーだけで育つから、このウキクサを水辺で育てれば、資源をほとんどかけずに水を浄化することができ、しかも大量に増えたウキクサは、石油に変わるバイオマスエネルギーの原料として有効利用できるってわけ。小さなウキクサを使った環境浄化技術には、人類の未来を左右するような大きな可能性が秘められているんだ。


人々が暮らし、社会生活をおくると、モノを生産・消費する過程で様々な環境に影響を与え、それが行き過ぎると環境汚染になる。その因果関係を科学的に明らかにしようというのが近藤研究室のテーマだ。主な研究対象は大気と水だが、大気汚染に関しては信じられない話もある。実は樹木もオゾンやPM2.5といった、大気汚染物質の原因物質(揮発性有機化合物:VOC)を放出しているのだ。

植物は環境に優しいという概念を覆すような話だよね。じゃあ、どれくらい影響を与えているのか検証しようというのがこの実験。グロースチャンバー(後ろにある小部屋)という温度や光量をコントロールできる装置に樹木を入れ、BVOCの放出量を測定する。この結果を全国の森林データと組み合わせれば、これからの緑化や森林環境を考える上で役立つデータベースができあがるというわけだ。


陽子とともに原子核を構成する中性子。無電荷のため高い物質透過力を持つなど多くの比類なき特徴を有している。そのため、学術分野のみならず新材料や医薬品開発などへの応用研究も盛んに行われている。この中性子研究で世界をリードするのが村田研究室だ。今いるのは、世界最強の強力14MeV中性子工学実験装置、通称オクタビアンの加速器室だ。

オクタビアンは、質量数が2の重水素と3の三重水素を衝突させて、核融合反応により中性子を発生させる実験装置。ここで発生した中性子を使って、核融合炉(核分裂反応を利用しない未来技術)の設計研究やBNCTと呼ばれる新しいがんの放射線治療法の研究が進められているんだ。稼働中は30万ボルトの高電圧が発生するからもちろん立ち入り禁止。なかなか入れない場所なんだよ。


山中研究室では、環境や人に優しい未来の資源・エネルギー材料の開発をめざし、様々な実験や計測を行っている。この装置は単ロール液体急冷装置といって、高温にして溶かした物質を、1分間に最大1万回転という超高速回転させた銅のロールに吹き付けて、急速に冷却・固化することで特殊な物質を作り出すことができる装置だ。

水で冷却した場合と比べておよそ1000倍の速さで冷却できるから、とても小さなナノサイズの微細構造を有する物質や、通常の手法では得られない結晶構造・組成を有する物質を作り出すことができるってわけ。今日の実験で作製したのは準安定相Al6Ge5という、熱を電気に直接変換する熱電材料として期待されている新物質の一つ。山中研究室では、世界で初めて比較的純粋なAl6Ge5の作製に成功し、物性(電気の流れやすさや熱の流れやすさ等)を測定したんだ。

環境問題とエネルギー問題は切り離すことのできない人類の大きな課題で、両分野を高度に理解することが重要です。そのため1年次は豊中キャンパスで工学部での勉学に必要な基礎科目を履修し、導入科目で環境・エネルギー問題は何かを俯瞰します。2年次からは工学部のある吹田キャンパスで、まずは環境・エネルギー工学の全体像を学び、2年次後半から3年次後半にかけて集中的に専門科目を履修します。4年次になると1年間をかけて卒業研究に取り組むために各研究室に配属され、指導教員よりFace to Faceでの指導が行われます。
また、学部卒業者の約9割が大学院に進学し、環境分野あるいはエネルギー(原子力など)分野の中で興味関心のあるテーマを掘り下げて研究していきます。

エネルギーを生み出し、無駄なく効率的に供給するためには様々な装置を最適に組み合わせた巨大なシステムやプラント、ネットワークが必要です。すなわち、エネルギー問題を探究すると、モノづくりにおいて求められる、全体を俯瞰してデザインする力、プロジェクトをまとめ上げて指揮・監督する力が備わるのです。環境・エネルギー分野の専門知識とそうした力を身につけた人材は、電力会社をはじめとするエネルギー関連メーカーに限定することなく、産業用設備、化学プラント、精密機器、医療機器、測定機器、光学機器など、技術立国ニッポンのモノづくりを支える製造業全般で幅広く活躍しています。また、就職活動、進路指導に際しては、卒業生の体験談などを参考にしつつ、どんな仕事をしたいか、何を作りたいかを重視し、それが可能な企業の個別事業部門とのマッチングを行っています。

排水処理や水浄化などを手掛ける環境機器メーカーや環境エンジニアリング、エネルギー供給システムやインフラシステムを手掛ける建設会社、ゼネコン、コンサルタント、さらには環境政策の企画から推進までを行う官公庁などが環境に直接関わる業種です。これだけでも幅広い活躍の場がありますが、実は表からは見えないところにさらなる活躍の場が広がっています。例えば、業種に関わらず製造工程において水を使うメーカーは数多く、そこには水を処理して再利用する環境システムが必要です。社会的責任(CSR)の観点からも効率経営の面からも重要で、近年、各企業はそのノウハウを内在化し、環境適応型企業としての成長戦略に位置付けています。廃棄物処理についても同様のことが言え、新興国からのニーズも高まっています。つまり、環境・資源・エネルギーの問題に積極的に取り組む企業の全てが進路となり得るのです。


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