「水の惑星」といわれる地球。その表面の約7割を占める海を舞台に活躍するのが船舶などの海洋構造物だよね。
旅をしたり、原油や貨物を運んだり、天然資源を開発したり。
そこにはモノづくりの全てが詰まっているんだって!

超豪華客船や大型タンカー、LNG船、あるいは石油プラットフォームや洋上風力発電ファームを想像してください。これらは、高層ビルやホテル、プラントなどに匹敵する巨大な構造物であり、"総合工学の粋"と言えるモノづくりの成果です。そこには、「海」に関する人工物をデザインするための構造力学や流体力学などの工学的な観点に加え、環境との調和共生と循環型社会の構築を目指す深い知性が必要です。
かつて造船王国と言われた日本の基礎研究や科学技術は現在でも世界屈指であり、大阪大学の船舶海洋工学研究も長い歴史と実績を誇ります。その蓄積された知見を基礎から応用まで幅広く学び、探究するのが船舶海洋工学科目です。
究極の省エネ輸送機関として、海洋観測及び資源開発の先鋒として、自然エネルギーの前線基地として、船舶海洋構造物をさらに進化させる人材を育成します。


船舶や水中移動体の推進性能、海洋流体力学に関する研究を行っているのが戸田研究室。その研究テーマの1つとして、水性生物を模した水中移動ロボットの開発を行っている。和食店の水槽で泳ぐイカを想像してほしい。マンガのようにジェットを噴出して泳ぐのではなく、体の側面のヒレを動かして泳ぐ姿を思い浮かべることができたかな。

そこでこの2つの物体を見てほしい。これはモンゴウイカなどを模擬したヒレを動かして泳ぎまわるロボット。向かって右のロボットはヒレのゴムを張っていない状態で動作テストをしているところで、左の長いほうは人間が乗れる水中スクーターに用いるために片側のみでヒレの性能をテストする準備段階だ。少し動かしてみよう。ヒレの動きを見事に再現しているでしょう。このロボットにもしっかり海洋流体力学の知識が生かされているんだよ。


大沢研究室では、巨大な船舶や海洋構造物の耐久性向上を目的に、材料や溶接の強度、腐食防止などの研究を行っている。この大きな機械は鋼材の疲労実験をするための特殊な装置だ。試験体を大きな力で上下から引っ張るため、とても頑丈にできている。今取り付けている鋼板は20mmの厚さがあり、板だけなら100トンの力で引っ張っても壊れない。

でも、鋼板を溶接して繰返し力をかけると金属疲労を起こして板の単体強度よりずっと小さな力で壊れてしまうんだ。通常は30トンの負荷を50万回かけたら破断する。船の安全のためには、この壊れるまでの回数、疲労寿命をできるだけ長くしたほうがよくて、現在、特殊な溶接方法で疲労寿命を大幅に伸ばす技術を研究中だ。この試験体はその新技術で作られたもので、30トンの荷重を200万回繰返してやっと壊れるから、疲労寿命は4倍だ。早期の実用化が期待されている技術だ。


"波"という非線形流れをテーマに、様々な研究に取り組む柏木研究室。モチベーションの源は、波という現象の奥深さ、不思議さにある。今日見てもらう実験も実に謎めいている。確かめたいのは、クローキングと呼ばれる、理論上ではあるとされる現象だ。クローキングとは、中央の大きな浮体を取り囲む比較的小さな有限個(この実験では8個)の浮体の配置を

最適化すると、中央の浮体が散乱した波を浮体群の外へ伝播しないように閉じ込められ、浮体群の外だけを見ると、あたかも浮体群がなかったように入射波が通過していく現象のことをいう。果たしてそんな現象が存在するのか、結果はいかに──。このような不思議な現象の流体力学的理由を知ることは、単に「面白い」という興味のみではなく、浮体に働く波漂流力を軽減して係留力を小さくできるという工学的な応用にもつながっていくのだ。


藤久保研究室では船舶をはじめとする海洋構造物の強度を調べている。研究の1つの柱は「海洋構造物にどのような力が作用するか?」。もう1つが「海洋構造物がどこまでの力に耐えられるか?」だ。今、目の前にあるのは、海洋構造物が万が一巨大な波に遭遇したときにどう壊れるか?を世界に先駆けて解明したときの記念すべき模型。

そして、ちょっとわかりづらいけれど、(写真左の学生が手にしている)この金属片の形状に海洋構造物の強度を模型で再現するための技術の粋が尽くされている。これを模型に装着して実験することで、こういうシナリオならこう壊れるといった現象が解明できるというわけだ。実験と並行して世界最先端の数値シミュレーション技術も開発していて、こうした研究成果が事故原因の解明や設計技術の向上、さらには海洋構造物の構造安全性に関する国際基準づくりに生かされていくんだ。

"受注してからでなければ開発・設計・施工できない大型構造物"をつくりだすための工学を学ぶのが地球総合工学科です。具体的には「船舶海洋工学」「建築工学」「社会基盤(土木)工学」の3つの分野(学科目)です。1年次は、これらに共通する専門領域の基礎概念と教養を全体で学び、2年進学時に、学生の希望と成績によって進む学科目が決まります(分属)。

船舶海洋工学科目では、2〜4年次の3年間のカリキュラムで数学、力学を中心に、流体、構造、制御などの学問領域を体系的・段階的に学び、同時に船舶・海洋構造物という巨大システムを1つの例題として、様々な事象を力学の観点から多面的に捉え、多分野にも展開できる応用力を身につけていきます。

日本は世界の船舶海洋工学をリードする立場にあり、造船・重工など船舶関連企業もその技術力を生かして高付加価値の船舶を建造し、世界に送り出しています。天然資源の供給を担う海洋開発分野でも日本企業が大きな存在感を示しています。エコロジーやエコノミーの観点からの社会的ニーズもますます高まることから、未来の船舶海洋分野を担う技術者・研究者には大きな期待が寄せられています。
また、船舶を題材に高度な構造力学や流体力学を身につけた人材は、製造業全般の企業が求めており、多くの卒業生が、自動車、建設機械、航空機、機械、情報・通信など様々な産業分野の日本を代表する優良企業で、指導的技術者として活躍しています。
海事政策の専門家として関係省庁や国際機関で活躍する道もあります。

船舶海洋工学科目 大阪大学工学部地球総合工学科