マテリアルって、素材・材料のことだよね。
実は、材料をつくることと製品をつくることは車の両輪の関係で技術立国ニッポンの競争力が高いのはマテリアルに強いからなんだって。
さっそくマテリアルの魅力や可能性を探りに行こう。

"材料を制するものが世界を制する"という言葉をご存知ですか。古くは中世の三大発明といわれる「羅針盤、活版印刷、火薬」。羅針盤は磁性材料が開発されたから、活版印刷は鋳造しやすい鉛合金材料ができたからこそ生まれた発明であり、火薬はまさに材料そのものの発明です。新しいマテリアルが生まれることで、革新的な技術や製品が開発され、人々の暮らしや産業構造がガラリと変わる。マテリアル科学が及ぼすインパクトは大きく、可能性は無限です。

それは現代も同じです。例えば、ライフスタイルに大きな影響を与えたスマートフォン。指で触れるだけで操作できるタッチパネル、中に詰まった数々のデバイス、そして小さくても大容量のバッテリー、いずれもマテリアルの進化があってこそ実現できたもの。ハイブリッド車や燃料電池車のコア技術もマテリアル科学が支えているし、航空・宇宙開発もマテリアル科学なくして進歩はありません。
[マテリアル科学コース]は、様々な材料が持つ基礎物性のメカニズムを解明する基礎研究から、革新につながる高機能で信頼性の高い新素材を創成する応用研究まで、幅広い研究と教育を行っています。キーワードは、「ナノ」「情報・通信」「バイオ」「環境」など。マテリアル科学で日本のモノづくりの根幹を担う人材を養成しています。

冶金から始まる120年の学問の蓄積がマテリアル科学の基盤です。
大阪大学のマテリアル科学の歴史は、およそ120年前に設立された官立大阪工業学校の冶金科から始まっています。当時、素材といえば金属。鉱石などの原料から質のよい金属材料を効率よくつくりだす"冶金学"が重要な学問でした。大阪大学は冶金学の世界的なメッカの1つであり、その研究業績と輩出した人材を通じて、日本の素材産業の発展に大きく寄与してきました。研究対象は、鉄から非鉄金属やセラミック、触媒、そしてシリコンなどの半導体、炭素を使った新素材、生体材料、ナノ材料へと時代を切り開く先端素材へと展開。基礎学問の厚みと多岐にわたる研究活動で、今も大阪大学は世界のマテリアル科学をリードし続けています。


究極のエコカーといわれる燃料電池車がいよいよ市販されたけれど、今ここにあるのも、小さいけれど立派な燃料電池。ボンベの水素と空気中の酸素を反応させるとちゃんと電気が発生する。さて、ここで考えてほしいのが、水素はどこから供給されているのかってこと。現状では化石燃料を燃やして取り出しているから、クルマ単体ではなく地球レベルで見ればまだまだエネルギー問題を解決したとは言い切れないよね。

そこで太陽光のエネルギーを使って水から直接、水素と酸素を取り出そうというのが山下研究室で研究している「光触媒」だ。燃料電池車から排出される水から「光触媒」で水素と酸素を取り出し、それを再び燃料電池車に送り込めば、真に究極のエコカーができるというわけだ。エネルギーは太陽光のみで有害物質は一切出さない。これが山下研究室が提唱する『光クリーンテクノロジー』の1つのカタチ。エネルギー・環境問題を解決するエコマテリアルとして「光触媒」の機能を高めるべく、原子・分子レベルから研究が続けられている。


これは開発した材料をナノレベルで観察するための透過型電子顕微鏡。この白い筒の中で加速した電子を試料にあてて原子1個1個が並ぶ様子や変形の挙動を観察し、材料の結晶構造と発現する機能との関係を解明しているんだ。結晶構造まで踏み込んで材料開発を行っている研究室は実はそれほど多くなく、安田研究室がトップレベルの研究成果を発信する所以にもなっている。

では、どんな材料を開発しているのか。それはさまざまな結晶構造を持った機能性金属材料だ。現在、主に取り組んでいるのは、航空機用ジェットエンジンや火力発電のタービンブレードに使われる耐熱材料やハイブリッド車のモーターに使われる磁石など。原子の配列・結晶構造を自在に操ることで、これまでの材料では達成することのできなかった高温耐熱性や高磁束密度といった機能の発現に挑戦し、さらに企業と共同研究を行うことで実社会での応用展開まで視野に入れている。数ある研究室の中でも、より実用化に近い研究を行っているのも安田研究室の特徴といえるだろう。


防塵服に着替えてやってきたのは、GaN系半導体を使った赤色LEDの基板をつくる有機金属気相エピタキシャル成長装置(写真左)が設置されたクリーンルームだ。従来の赤色LEDはGaAs系半導体だったが、GaN系半導体を使った赤色LEDは、青色LEDや緑色LEDと同一基板上に作製できることから、光の3原色を集積した小型高精細LEDディスプレイの実現に向けて不可欠な材料として世界的に注目されている。

しかもこの基板は、藤原研究室が長年研究してきた希土類元素(レア・アース)の特性を十分に活用したからこそ創製できたもので、現在のところ、LEDを作製できる品質を達成しているのは世界でもこの藤原研究室のみという状況だ。今君たちが持っているのが赤色LEDの基板をデバイスにしたもので、動作電圧が非常に低いため、乾電池でも明るく光らせることができるんだ(写真右)。誰もやっていない世界でトップになる!が藤原研究室のスローガン。レア・アースを原子レベルで制御することでオンリーワンのマテリアル創造に挑んでいる。


自然界を構成する様々な材料は、必要な方向に必要なだけの機能を発揮する「異方性」という性質をもっている。ある方向に特化して力を発揮させれば、すごく強い材料が生まれる。私たちが跳んだり走ったりできるのも、体の中の骨が、力のかかる方向にちゃんと強化されているおかげ。そして、その異方性の源となるのが、材料の中での原子の並びなんだ。原子と言えば、オングストロームという、1メートルの10億分の1以下のスケールのすごく小さな世界。

そんな小さな小さな原子の並びが材料の性質を決めているなんて、すごいと思わない? この原子の並びを調べるのがここにある装置。エックス線を使って原子の並び方やその方向を知ることができる最先端の装置だ。中野研究室では、自然界に学び、原子の並びから生まれる異方性の機能に注目することで、異方性を持たない既存の材料では実現できなかった超高機能な材料の創製に挑戦している。骨インプラントなどの生体医療用材料から航空宇宙用材料まで、異方性が私たちの未来を変えていく!?

大阪大学でマテリアル科学を学びたいという方は、まず工学部の「応用理工学科」に入学する必要があります。そして、1年次終了時の科目配属を決める分属で「マテリアル生産科学科目」を選択し、さらに2年次終了時の分属で「マテリアル科学コース」に進みます。ただし、学科目・コースには定員があるため、分属は学生の希望をもとに1年次の成績を考慮して決定されます。
ですから1年次は、「機械工学科目」に進む学生と同じクラスで、"マテリアル(材料)"と"機械"の両分野に共通する力学や解析学、電磁気学、化学概論、物理学実験などの講義を受けながら、マテリアルと機械、それぞれの序論を学ぶことになります。こうしたカリキュラムを採っている大学は希ですが、そこには狙いがあります。まず、本当のモノづくりとは何かを知ること。材料だけでも、機械だけでも、画期的・革新的なモノをつくりだすことはできません。双方が他方のニーズや課題を解決し合ってこそ、今までなかったモノが生まれるのです。そのために求められるのがプロジェクト全体を俯瞰できる視野と専門外の基本的な知識。"ジェネラリスト的な幅広い視野を持ったスペシャリスト"を育成するのが狙いです。
また、モノづくりを学びたいけれどまだ具体的な分野まで絞れていないという人は、基礎や概略を学びながら自分の進むべき道をじっくり考えることができます。それは2年次終了時の分属にも言えることで、同じマテリアル系でも、基礎や応用分野の研究が好きなのか、実務的な生産プロセスの研究をやりたいのかを、基礎材料化学や材料力学、材料量子力学、熱力学といったマテリアル科学の基礎を学びながら判断することが可能です。

3年次は材料プロセス工学や材料物理化学、先端・融合材料学などを学びながら専門性を向上。4年次は研究室に配属され、卒業論文のテーマとなる研究に取り組みますが、世界的なマテリアル科学のメッカらしく、研究室の数は25にも上ります。
学部卒業後は、約95%の学生が大学院に進学して研究活動を継続しています。

マテリアル科学コースの卒業後の進路で最も多いのは、学んできた学問と直結する「材料・新素材」分野です。直近3年間の平均で卒業生の33.9%が日本を代表する素材メーカーに就職しています。次に多いのは28.1%の卒業生が就職している「自動車・航空・宇宙・機械」分野で、就職先には自動車メーカーや重工メーカーが顔を揃えています。続いて、「エレクトロニクス」分野16.4%、「精密機械」分野6.9%、「情報・サービス」分野3.1%となっており、大学や官公庁にも4.0%が就職しています。企業の大半がモノづくりを行うメーカー。最先端のモノづくりにマテリアル科学の果たす役割は大きく、素材を扱う科学者、エンジニアが活躍するフィールドは拡大しています。

大阪大学 工学部 応用理工学科 大阪大学大学院 工学研究科 マテリアル生産科学科目 マテリアル科学コース