電子デバイスってなんだろう? 例えばノーベル物理学賞の受賞対象となった青色発光ダイオードがそうだね。プレゼンで使うレーザーポインターのレーザー発振器もそうだし、パソコンの性能を決めるCPUやデジカメの撮像素子もそうだ。
そんな現代社会になくてはならないデバイスを、量子の世界の基本原理から学べるのが電子工学コースなんだ。

量子とは、電子や陽子など物質を構成する粒子の総称です。量子は粒子であると同時に波としての性質も持ちます。また、波である光も、その最小構成要素である光子は粒子としての性質を持つため、これも量子の一種です。これらを扱うにはナノメートル(1nm=100万分の1mm)という非常に小さなスケールの世界に飛び込まなくてはなりません。そこは我々の常識がまったく通用しない異次元の世界。例えば群衆が向かって来る中に目を閉じて飛び込んでいったらどうなりますか。絶対にぶつかりますね。でも電子は1度もぶつからずに簡単に通り抜けることができます。我々の生きている世界がニュートンの世界だとすると、量子の世界はアインシュタインの世界。その世界の法則を使って生みだされたのが半導体などを使った電子デバイスであり、あらゆるエレクトロニクス製品に組み込まれてIT社会を切り拓いてきたのです。

量子の世界の法則を使った電子デバイスは、我々人類の夢や願望を叶えるためのキーテクノロジーです。我々は道具や製品を使うとき、もっと早く、もっと小さく、もっと美しく、もっと明るく、もっと遠くに、もっと省エネに、もっとエコロジーにと尽きることのない欲望を抱きます。あなたが持っているスマートフォンも再生可能エネルギーを利用する太陽電池も究極のエコカーといわれる燃料電池車もそうやって生まれてきました。
だから電子デバイスは進化し続けています。デバイスに使われる物質中の電子の振る舞いを知り、より機能的に働く分子の構造に着目し、不可能を可能にする新材料を開拓する。さらに製品化のための作製プロセスも開発する。電子工学コースは、こうした電子デバイスに関する基礎から最新のテクノロジーまでを学び、研究するコースです。


これは分子線エピタキシ装置(左写真)といって、1原子層の精度で結晶を成長させることができる装置なんだ。約1億円と高価なものだが、研究に不可欠な装置だ。近藤研究室が挑戦しているのは、世界初となる第3世代の半導体レーザー発振器の実現。伝送能力の限界が近づく光ファイバー通信に革新的な進化をもたらす"究極の半導体レーザー"の創出をめざしてフォトニック結晶を用いる画期的な半導体の構造を考案。

シミュレーションと検討を重ねながら、その構造を達成するための新規材料づくりから、ナノスケールの超精密加工技術の開発、できあがった素子をデバイスにするための製造方法の確立までトータルに取り組んでいる。半導体内部に閉じ込められた光が回転しながら増幅する円形の共振器(右下写真)をフォトニック結晶によってつくりだし、その近傍に光を取り出す光導波路を設置することで、エネルギーロスのない半導体レーザーをつくりだそうというアイデアだ。完成すれば通信容量を一気に今の約100倍にできてしまう夢のデバイスなのだ。


ダイオード、トランジスタ、LSI、CCDなど、現代のエレクトロニクスを支えているのは半導体デバイスだ。この半世紀あまりの間に急激な高性能化・小型化が進み、今では10ナノメートルという原子数十個ほどの微細なデバイスが現実になっている。ただし、小さくなればなるほど逆に拡大するのがコストとリスクだ。新しい半導体でより高性能なデバイスを創りたいと思っても、開発・試作・実験には膨大な費用と時間を要し、実現は難しい。

そこで注目されるのが、未知の極小半導体デバイスの性能を計算で予測するシミュレーション。今、見ているのはその1例で、電子が半導体の内部をどのように運動するのかをシミュレーションしたものだ。シミュレーションには、材料を塊ではなく原子として扱うことが必要で、そのためには原子論や量子力学を考慮した手法を開発しなければならない。重要なのは、的確な価値判断のもと、本質を捉えたモデリングと簡単化をいかに行うか。新規デバイスの開発に不可欠なサイエンスとしてますます期待が高まっている。


「材料を制すものは、技術を制する」という言葉がある。2014年度のノーベル物理学賞がGaN結晶によるLEDの実現に贈られたことでも、材料技術の重要性が示された。
森研究室は、幸運なことに、1993年に波長変換結晶CsLiB6O10(CLBO)を発見し、その結晶高品質化技術を産学連携で開発することで半導体産業で必須となるCLBO波長変換素子の実用化を達成。

世界最高出力の紫外レーザーの医療・産業応用を達成している。さらにその結晶化技術をタンパク質結晶化に転用することで、従来法では不可能であった高品質化に成功し、創薬支援大学発ベンチャー企業「㈱創晶」を2005年に起業するに至っている。現在は、天野浩先生(2014年度ノーベル物理学賞受賞者:左写真の右側)と共同でGaN結晶の高品質化技術開発など日本が世界をリードするプロジェクトなどに注力している。こうしたプロジェクトの活性化には心理学的なアプローチを取り入れるなど研究室の運営方針もユニークで、新機能材料で限界を超えるという志と気風にあふれている。


太陽光を電気に変換する太陽電池。今、普及している太陽電池は無機物であるシリコン(Si)からつくられているけれど、このグローブボックス(写真左)の中でつくっているのは有機物を材料とする太陽電池。プラスチック太陽電池とも呼ばれ、薄くてしなやかなのが特徴だ。隣の部屋ではレーザーを当てて、できた太陽電池の変換効率を調べている(写真右)。
さて質問。有機とは何だろう? 有機は元々「生きている」という意味がある。

昔は生物でできているものを「有機物」、鉱物でできているものを「無機物」といったけれど、今は主に炭素(C)でできていて、それに水素、酸素、窒素などが結びついた分子を有機物と定義している。この「有機」をキーワードに未来のデバイスを研究しているのが尾崎研究室だ。有機物でできた動物は、考えたり、記憶したり、動き回ったり、子孫を残したりできるよね。そんな無機物にはない優れた特徴を原子・分子レベルから解明・応用することで、現在の技術を凌駕するようなまったく新しい概念のエレクトロニクスを創出することに挑戦しているんだ。

まず電子情報工学科に入学し、2年次から電気電子工学科目に所属(学科目分属)します。1年次から2年次の前期までは、教養教育科目や言語・情報教育などの共通教育系科目とともに、専門科目を理解するための基礎的な数学や電気・電子、物理、力学、化学などを同学科所属者全員が共通に学びます。更に、2年次後期からは「電子工学コース」に所属(コース分属)し、3年次前・後期にかけて同コースに独自に編成された専門教育科目を学びます。

「電子工学コース」のカリキュラムの特徴は、無機物・有機物などに関わらずあらゆる物質の主な性質を決定づける電子の振る舞いから、高度な機能を有する電子デバイスの実現やその応用にわたり、その全ての過程に関わる基礎的科目が幅広く提供されているため、個人の興味・希望に応じ、かつ、その後の進路にふさわしい専門教育科目を適切に選択し学ぶことができることにあります。今後も社会からは、基礎的な理論を踏まえて新規材料を創りだしたり、それを機能的素子としてまとめ上げたり、あるいは更に多角的・効率的に活用したりすることできる人材育成が求められています。それらの過程のいずれかの分野で活躍できる人材となるには、基礎学問、材料科学や応用技術などの基礎的要素を理解できる学力を修得する必要があります。
このため本コースでは、電磁理論、量子力学、数学解析、ナノ物性計測、分子電子材料、半導体工学や量子エレクトロニクスなど幅広い分野にわたり基盤となる普遍的な基礎知識を身につけた上で、先端を行く最新技術に取り組み、かつ、将来的に生じる技術的変革にも対応できる人材を育てるべくカリキュラムが提供されています。このような幅広い分野から必要な専門教育科目を学ぶに当たっては、進むべき分野にふさわしい修得科目の適切な選択が必要となるため、学び方(単位修得)のモデルを提示するとともに、4年次の研究室配属時の参考となるように、配属対象研究室毎に修得すべき推奨選択科目も示されています。
さらに、やる気があり優秀な学生を対象に、3年次の後期から一足早く研究室に配属される「特別配属」や、3年間で卒業資格が得られる「早期卒業」の制度も設けられており、一足早く社会で活躍できるような進路も設定されています。
また、学部卒業後は90%以上の学生が、修得すべき内容の高度化に対応するため、大学院に進んで研究や勉学を続けています。

電子工学コースの卒業生は、電気機器、自動車、重工業、精密機器、コンピュータ、エネルギー、素材、さらには金融やコンサルティングなど、実に多岐にわたる業界で活躍しています。就職先には日本を代表する優良企業が名を連ねています。電子情報工学科だから、電子工学コースだからと言って電気関係に限らず、就職に当たっては幅広い選択肢が広がっていることが特徴です。

というのも、電子デバイスはあらゆる産業を基盤から支える重要な装置。そこには量子力学という普遍的な原理から、電気・電子の基礎、半導体や材料工学、回路設計、加工プロセスなど、全ての業種・業界で必要とする要素が詰まっているからです。また、学部4年次からの研究活動では、自ら課題を見つけてその解決方法を考案し、試した結果を評価して行動にフィードバックするという、ビジネスの現場にも通用する課題解決のためのアプローチ方法も身につけています。普遍的な知識と課題に立ち向かう姿勢。この2つの素養が高く評価され、卒業生たちは毎年、希望する就職を実現しています。

実験を行う授業はいろいろありますが、2年次に行われる『創成実験』は、とても難しいけれど、とても楽しいと評判の授業です。というのも『創成実験』で与えられる課題には"これが正解"という答がなく、自由な発想とアイデアで課題の解決方法を考え、それを具体的に実行できるロボットを作製するからです。
ここ数年の課題は「黒いラインが引かれたコースをできるだけ早く走破しゴールに到達する」というもので、3〜4名のグループで課題に挑みます。授業は週1回(3コマ)で全12回。まず、センサーやモータ、マイコンといった使用するデバイスの特性を学んでから、アイデアを練り、ロボット作製に取りかかります。

メンバーは、センシング担当、機械設計担当、プログラミング担当、そして統括リーダーの役割を分担。自分の責任を果たしながら相互に助け合う共同作業の大切さや、議論を通じてアイデアをブラッシュアップしていく過程も学びます。
そして最後の授業では、教室に設けられたコースを使ってタイムトライアルとトーナメント形式のコンテストを開催。シビアに順位を競います。
答のない課題のおもしろさ、創意工夫のおもしろさ、手を動かすおもしろさ、仲間と一緒に目標を追いかけるおもしろさ…『創成実験』にはモノづくりのおもしろさが凝縮されています。

大阪大学 工学部 電子情報工学科 大阪大学大学院 工学研究科 電気電子情報工学専攻 電子工学コース