新幹線、エレベータ、電磁調理器に産業用モータ。最近では電気自動車も増えてきた。全部、動かしているのは電気だ。電気にはどうしてそんな力があるんだろう。そんな素朴な疑問に答えるサイエンスから、エネルギー問題解決への取り組み、新エネルギーの創成まで、電気工学コースには、「電気」を人類に役立てるための学びが詰まってる。

現代の暮らしは「電気」に支えられています。ではあらためて質問。 電気ってなんだろう? あまりにも身近でその存在について深く考えたことがないのではないでしょうか。電気は私たちの体も動かしています。脳が働くのも筋肉が伸縮するのも電気が流れているからです。つまり電気は電流であり、さらにいえば原子の中の電気を帯びた原子核や電子のふるまいです。そして原子核や電子が動くときに飛び交っているのが光の粒である光子(フォトン)で、そこに働いているのは、自然界を支配している4つの力のうち、唯一人間が制御可能な「電磁力」。つまり電気は、モノを動かすもっとも基本の力なのです。

その「電気」を物理的な基礎の理論から、基盤となる工学的技術、社会的な応用、エネルギー問題、さらに未来技術の開拓まで幅広く学べ、研究できるのが電気工学コース。学びのキーワードは「電気」「電力」「光(レーザー)」「プラズマ」です。

電気工学コースの学びは2つの大きな柱で構成されています。1つは"エネルギーとしての電気"。つまり「電力」や「電力システム」に関する先進的な領域です。例えば、既存の電力インフラと再生可能エネルギーを組み合わせて賢く無駄なく使用するための次世代エネルギー供給網「スマートグリッド」や、太陽光や風力、バイオマスなどのエネルギー供給源により地域でつくった電力を地域で使う小規模エネルギーネットワーク「マイクログリッド」を実現するためのシステム設計や解析、制御のための効率的な手法の開発、あるいは電力の発生・伝送・変換・制御のための要素技術の開発、さらには超伝導技術の研究など、エネルギー問題や環境問題の解決をめざして、あらゆる観点から取り組んでいます。

もう1つの柱は、電磁気学をベースに「光(レーザー)」と「プラズマ」で新エネルギーや新物質を創成しようという未来のサイエンス領域です。新エネルギーとは「核融合エネルギー」。核分裂とは異なる原理であり、高温度・高密度のプラズマによって太陽の中心に近い環境をつくりだし、そこからエネルギーをとりだす新しい発電方式です。国際共同研究が進んでおり、大阪大学も重要な役割を担っています。また、高温度・高密度のプラズマを人工的につくりだすことができるパワーレーザーの知見や技術を用いて、通常ではあり得ない極限的な状態の中で新物質を生みだしたり、世界にも例のないレーザーによる加速器の実現に挑戦しています。
言葉としてはポピュラーな「電気」ですが、それはサイエンスの1つの起源だから。自然界の基礎の原理からエネルギー、環境、未来の技術までを幅広く学べるのが電気工学コースの魅力です。


太陽光、風力、地熱、燃料電池、コージェネ、2次電池、キャパシタなどの技術革新によって、いつでも、どこでも、だれでもが電気エネルギーの「発生」「変換」「制御」「貯蔵」を比較的手軽に行えるようになり、"電力の地産地消"が可能な社会がすぐそこまで来ている。環境にやさしく、災害に強い、安心・安全な社会の新しい電力のあり方だ。伊瀬研究室では、その達成に必要な技術を「パワーエレクトロニクス」をベースに開発。

例えば、直流配電と再生可能エネルギー電源およびキャパシタ電力貯蔵によって低環境負荷で高効率なローカル電力システム(マイクログリッド)を構成する新技術をすでに実現。また大電力向け直接周波数変換装置の制御方式の開発も行っている。これは周波数が異なる電気を1つのネットワークとして活用する上でとても有用な技術だ。他にも分散電源の系統安定化を図る「仮想同期発電機」の制御手法の開発などに取り組んでいる。持続可能な社会のための電力システム技術を創造する。直接的に社会に貢献できる、やりがいのある研究テーマだ。


上田研究室は、プラズマを利用した核融合エネルギー開発に関する研究を行っている。核融合エネルギーとは、重水素と三重水素を2〜4億度に加熱し、プラズマ状態となった原子核が融合することで発生するエネルギー。現在、日本、欧州、米国、ロシア、中国、韓国、インドなどが協力し、実証装置をフランスに建設するプロジェクトが進行中だ。上田研が担当するのは、核融合を起こすプラズマを閉じ込める容器側の機器や材料の研究。

核融合が起こるとヘリウムが副次的に生産されるが、これはいわば燃えかすのようなもので取り出さないといけない。そのため容器には、プラズマを少しずつ外に流してヘリウムを取り除く機構をつける。ただし、機器には数百万度に達する高温のプラズマがぶつかるため、その表面での現象を解明し、長期間耐えられる材料をつくらなければならない。研究室では、パルスレーザーやイオンビームを使って高温環境を模擬した実験を繰り返し、装置設計の基礎となる知見を蓄積している。今こそ新エネルギーを実現する壮大なプロジェクトの一員になるチャンスだ。


パワーレーザーを集光すると通常ではあり得ない超高圧の極限状態をつくりだせる。兒玉研究室では、このレーザーとレーザーで発生させるプラズマを使って新しいサイエンスに挑戦しているんだ。例えば、これまで地球に存在していなかった新物質の創生。炭素は理論上1000万気圧の条件下でダイヤモンドより密度が高く硬い構造になるといわれていたが、私たちの研究グループは世界で初めてこれを実現する状態をつくりだすことに成功。

スーパーダイヤモンドと呼ばれるこの新物質の特性を調べ始めている。次の課題は、1000万気圧でしか存在しないスーパーダイヤモンドを1気圧の状態でも安定した物質にして手の上に取り出すことだ。また、パワーレーザーによるプラズマ技術を発展させて、現在は1キロもの規模になっている加速器を10メートル程度のコンパクトな装置にしてしまおうという研究も進めている。さらにはレーザーとプラズマで真空をつくりだし宇宙開闢の謎に迫ろうという壮大な研究テーマも。いずれもレーザーに強い大阪大学ならではの夢のある研究だ。


これは自動搬送台車のオンライン搬送計画システムの模擬実験。今の工場には無人の台車が導入され、物品の搬送が自動化されている。台車は、製造ライン上の工作機械に必要な部品を最適のタイミングで届けなければならない。そこで課題となるのが、どのようなスケジュールで製品を生産すると最も効率が良く、しかも電力消費や環境負荷を低減できるのか。そのためには多くの台車をどのように連携させて移動させればいいのか──。

その解を論理的思考と数理学で導きだし、汎用性のある「方法論(モデル)」を提示。プログラムや組込回路に落とし込むのが高井研究室における研究の流れだ。もちろんこれは一例で、様々な再生可能エネルギーが実用化され、企業自らが発電を行う現代社会における「分散エネルギー管理システム」や「CO2排出量を加味したエネルギー取引システム」なども主要な研究テーマとなっている。世の中のあらゆる仕組みやシステムには改善の余地があり、根拠なく運用されている例も多い。そこに真理とも言える「方法論」をもたらすことがこの研究の醍醐味だ。

「電気工学コース」で学ぶには、まず電子情報工学科に入学、2年次からは「電気電子工学科目」に進み(分属)、2年次の後期から始まる「電気工学コース」を選択します。2年次前期までは、電気工学の基礎となる電磁気学や電気電子回路、コンピュータサイエンスなどをしっかり学び、2年次後期からより専門的な講義、演習、実習が始まります。「電気工学コース」のカリキュラムの特徴は、電力システムやビーム、プラズマに関連する科目が充実していること。実験装置まで含めての学びの環境や指導陣の顔ぶれは国内屈指といえるでしょう。4年次から配属される各研究室から履修を推奨する選択科目も提示されており、興味関心に合わせて、あるいは卒業研究に向けて体系的に学んでいくことが可能です。研究室は、日本で大阪大学にしかないレーザーエネルギー学研究センターの講座も含めて、電力システム系5研究室、レーザー及びプラズマ系6研究室。各領域の主要な研究分野がバランスよく揃っており、研究成果は世界に向けて発信されています。

やる気があって優秀な学生を対象に、3年次の後期から一足早く研究室に配属される「特別配属」や、3年間で卒業資格が得られる「早期卒業」の制度もあり、学部卒業後は90%以上の学生が大学院に進んで研究を続けています。

「電気工学コース」の学びの魅力は、これから入学するキミたちが、社会の第一線で活躍する頃をターゲットにモチベーションを持って学習・研究ができること。電気と光でエネルギー問題のパラダイムシフトを起こしたいといった希望をもって、電力関係や重電、重工などの企業や研究機関、あるいは行政などに就職することも可能です。 また、「電気工学コース」で学ぶ知識は応用範囲が広く、業種・業界を問わずどのようなメーカーに就職したとしても必ず役立ちます。就職した企業が時代の変化に即して業容を変化させたとしても同様で、柔軟に対応することができるでしょう。それだけに「電気」に強い人材に対するニーズは大きく、日本を代表する企業のほとんどを含め、多くの求人が寄せられます。卒業にあたり、進路の選択肢が多いことも「電気工学コース」の強みです。

大阪大学工学部 電子情報工学科 電気電子工学科目 電気工学コース