今や空気や水と同じように、あるのが当たり前になった「通信インフラ」。SNSや動画投稿サイトを楽しめるのも通信のネットワークがあるからなんだよね。
じゃあ、通信の仕組みはどうなっているんだろう。情報通信社会の基盤技術を学ぶ「通信工学コース」に潜入だ。

あなたはオンラインゲームをしたことがありますか? 離れた場所にいる人と対戦したり、チャットでコミュニケーションしたり、そこにはリアルタイムな仮想現実があります。そこで考えてみてください、通信技術、ネットワーク技術がなければ、そんなことは不可能です。これがゲームではなく交通システムだったら鉄道も航空も麻痺。金融システムは破綻するかもしれません。多くの情報が瞬時に確実に届く。

この一見当たり前の現象には物理的な基礎から光技術やワイヤレス技術まで、実に多くの技術の蓄積があり、増大する情報量を見越して常に新しい通信やネットワークの方法が研究されているのです。クラウドコンピューティングもビッグデータも、さらに"モノのインターネット"といわれる次世代のIoT(Internet of Things)も、支えているのは「通信工学」。その通信工学に主眼を置いて学べるのが【通信工学コース】です。

電子情報工学科は、家電からコンピュータ、携帯電話、インターネット、交通や医療などの産業システム、さらにはロボットまで、電気・電子をベースとする情報通信技術を体系的かつ網羅的に学び、その中で自分の得意とする専門分野を深く追求できる学科です。
1年次で、専門科目を理解するための基礎的な数学、物理、化学を学んだ後、2年次から「情報通信工学科目」に所属(分属)。フォトニック通信、ワイヤレス通信、マルチメディア情報ネットワーク技術といった通信系の工学を学ぶ一方、目的を持ったシステムをまとめ上げるための情報システム構成学やインテリジェントネットワーキング、人間情報工学などを幅広く学びます。
3年次のコース分けで「通信工学コース」「情報システム工学コース」に分かれる。「通信工学コース」では"通信"に軸足を置いたカリキュラムで専門性を高め、4年次になると所属するコースクラスに関連する研究室で卒業研究を行います。
学部卒業後、現状では90%以上の学生が大学院に進んで研究を続けています。

通信工学コースで学び研究をした卒業生は、通信技術の根幹となる物理に近い分野の知識から、光通信技術、無線通信技術、ネットワーク技術に関する知識、さらにはネットワークを構成する通信機器などのハードウエア技術、ネットワーク上で稼働するシステムを成すソフトウエア技術まで、ICTに関わる幅広い専門分野を理解することができます。従って全体を俯瞰し、構想する能力が身につき、多くの専門家が集結するプロジェクトをコーディネートするリーダーとしての役割が期待されます。

通信ネットワークを構築する企業、その運用を担う企業、通信機器のメーカー、交通ネットワークの構築をめざす自動車や鉄道、あるいは中央省庁やコンサルティング企業など、就職先は多岐にわたりますが、いずれも次代のICTを支える人材となっています。


これはサンプリングオシロスコープといって、高速光信号の時間波形を測定する装置。光通信システムの研究を行っている研究室は全国にいくつもあるけれど、多くはシミュレーションベースの研究で、様々な装置を使って実験ベースのネットワーク研究ができる環境が整っていることが井上研究室の大きなアドバンテージになっているんだ。
高性能・高機能な次世代の光通信システムの実現に向けて行っている研究のテーマは主に2つ。

1つは、光の量子力学的性質を通信システムに応用しようというもので、光を最小の1光子の単位で送受信することで究極の機密性を実現する「量子暗号」。物理学と工学が融合した最先端の研究だ。もう1つは、今は光の通り道が1本しかない光ファイバーの中に、複数の通り道を作って一気に容量を拡大しようという「空間多重」の研究。なんと、114という現在の世界記録を保持しているんだ。光通信システムは完成した技術ではなく、発展を続ける有望な領域なのだ。


今、手にしているのは開発中の人感センサだ。人の動きを感知するセンサはすでにあるが、これは天井から無線で供給されている電力を受信し、感知した情報も無線で伝送するバッテリーレスのワイヤレス・センサ。いつでも、どこからでも、情報の収集・発信を可能とするユビキタスネットワーク構築に欠かせないデバイスだ。三瓶研究室では、こうしたワイヤレスネットワーキング技術に関する研究も進めているが、もっと大きなテーマにも取り組んでいる。

それが第5世代(5G)移動通信システムの構想実現化だ。実は日本の通信システムはこのままでは危機的状況になる。現在、セルラー(携帯電話)ネットワーク、無線LAN、Bluetooth、センサーネットワークなどが錯綜し、周波数帯は限られているのに情報量は年々倍増。2020年には現在の何百倍にもなると予測されるからだ。これらのネットワークを統合し、ビッグデータ革命にも対応しようというのが5G構想。三瓶研究室は、異種システムの接着剤となる学問を深め、構想実現のためのストラテジーまで描いているのだ。


ここはショッピングモールやテーマパークの入場ゲートだと思ってほしい。複数のカメラが設置されていて、入場者の顔情報や服装情報などが抽出される。この情報をもとに利用者の場内での行動は場内カメラによってトラッキングされ、さらにその情報から利用者の行動傾向が予測され、その利用者が求めているであろう商品やサービス(アトラクション)を案内するという、馬場口研究室が開発した「HIFI(ハイファイ)」システムを模擬体験できるようになっている。

これは、近年、保護の重要性が訴えられているプライバシーに十分配慮しつつも、個人の一定の情報を生活やイベントの満足度を向上するために活用しようと検討、開発されたシステムであり、運用にあたっては、利用者一人ひとりがプライバシー情報の開示レベルを任意に設定したり、退場時に情報の蓄積・破棄が選択できるように考えられている。このシステムは、ICTを基盤とした知能化技術、マルチメディア技術、セキュリティ技術が融合したもので、プライバシーの「保護利活用情報基盤」として注目されているんだ。


あらゆるデバイスやシステムがインターネットにつながっている現代、デジタルデータを第三者から秘匿したり、データそのものの正しさを保証する「情報セキュリティ」の重要性は増すばかりだ。宮地研究室を主宰する宮地充子教授はこの情報セキュリティの分野における第一人者。暗号化方式の1つ、楕円曲線暗号の安全性を数学的に証明すると共にその実装にも取り組み、すでに多方面で標準化されてる。

こうしたセキュリティに幅広く利用される「暗号基盤技術」をはじめ、より安全で便利なIoT機器のアプリケーションを実現するための「セキュアプロトコル」、さらにはソフトウェアやネットワークの脆弱性をモデル化して安全性の評価を行う「セキュリティモデリング」の3つを柱に研究を進めている。理論研究のみならず、実用化をターゲットに企業との共同研究も数多く行っており、最近ではビッグデータの安全な利活用を促進するプライバシ保護技術に取り組むなど、社会への貢献度を高めている。

大阪大学 工学部 電子情報工学科 大阪大学工学部 電子情報工学科 情報通信工学科目 通信工学コース