これは遠くにいる人と対面で話しているような状況をめざして、JST CRESTにてATRと共同で開発されたテレノイドというロボットです。電話とちがうのは、遠くにいる人がこのロボットに乗り移ったような感覚で話ができること。相手がしゃべる口の動きや頭の傾け方などをロボットがリアルタイムで再現するので、まるで目の前にいるような感覚で会話ができるんです。誰でも乗り移れるようにこのロボットには性別がないんですよ。

これらは生物に学ばないロボティクスの実験モデルです。人間など生物の動きに学ぶロボティクスも重要ですが、正反対のアプローチもあるんです。たとえばこの3本足のロボット。2本を後ろ足と考えるとカンガルーのような動きが想像できますが、実はこの足には関節がありません。上についているモーターの振動で動くんです。振動で歩く生物なんていませんよね。じゃあこっちの球体ロボットはどうやって移動すると思いますか、考えてみてください。

見てのとおり、このムカデのような20脚ロボットにはセンサーもアクチュエーターもありません。でも、少し傾けて手を離すと勝手に歩きだします。やってみましょう。実にスムーズに歩きましたね。これは生物がもともと持っている歩行の原理を明らかにするためにつくりました。動力源がないシンプルな構造は、将来、エネルギー効率のいい歩行ロボットの開発につながるかもしれません。

どうです。カッコイイでしょう。これは事故や震災などの現場で負傷者を助けだすためのレスキューロボットです。ガレキの中を探索するロボットです。ダブルクローラーといって上と下のクローラーが独立した構造になっているので隙間に潜り込むことができます。この構造を利用して人を乗せて運ぶことができる担架ロボットなども開発しています。

スマートフォンの中身は小さなコンピュータです。便利なものですが、この小ささを実現するために超精密・超平滑加工技術が使われています。例えば切削加工。従来は刃の表面が滑らかであればサクッと削れると考えられていたのですが、常識に反して刃に特殊な溝を付けることでよりサクッと削れるようになりました。また研磨加工でも、研磨材を使わず光と水だけでマイクロ・ナノレベルの研磨ができるようになりました。我々はこうした新しい加工技術を開発しています。

掃除のとき、手の平にほうきを乗せて倒れないようにする遊びをしたことがありますか。これから機械がそれと同じことをするのをお見せします。この棒は自由に動くようになっていて、棒が倒れないように台車が左右に動きます。ほら、棒を倒そうとしてもちゃんと元に戻るでしょう。これが「制御」です。ロケットをまっすぐ飛ばすための姿勢制御装置や飛行機のオートパイロット、身近なところではエアコンの温度調整にも使われています。

これから2つの簡単な実験を見てもらいます。まず最初はこれ。シャープペンの先から芯がでていて、その先にお皿がついています。これからお皿に5円玉を1枚ずつ載せていきます。何枚で芯が折れると思いますか。……11枚目。12枚目。はい、折れてしまいました。徐々にしなっていって、荷重に耐えられなくなるとポキッと折れてしまう。それがこの鉛筆の芯の一般的な性質です。

次に電子顕微鏡の画面を見てください。白い棒状のものが見えますね。これは鉛筆の芯と同じ材料でできたマイクロスケールの針です。重りを載せる代わりに別の棒で曲げていきます。よく見ていてください。ほら、折れずにグニャグニャ曲がってますよね。同じ物質でも、スケールが非常に小さくなることで材料の性質はこんなに変わるんです。マイクロ・ナノスケールの材料の強度に関する学問はこれまでなかったので、これからの研究分野なんです。

この小さな容器の中に入っている赤いものは何だと思いますか。実は金です。しかもただの金ではなく、金ナノ粒子です。ナノ粒子というのは、直径が1〜100ナノメートル程度の微粒子で、そのサイズや形状によって特殊な性質を持つことから注目されている新しい物質です。金ナノ粒子は特定の光の波長を吸収するという性質があり、だから金色ではなく、こんな色に見えているんです。ここではそのナノ粒子の測定方法を研究しています。

これがナノ粒子を測定するための装置です。ナノ粒子のサイズを測る方法として「蛍光偏光法」を研究しています。これはナノ粒子に蛍光分子を標識し、蛍光分子から発せられる蛍光を観測することでナノ粒子がどのような回転をしているのかを解析して大きさや形状を測定する方法です。ナノ粒子には青いレーザーを照射します。――機械工学科目には新しいテーマがたくさんあります。まさにここで未来が開拓されているのです。