彼の指に集まっているのが、プラズマ。「先進電磁エネルギー」のひとつです。たとえばあなたも、レーザーやプラズマという言葉ならアニメやSFで耳にしたことがあるかもしれません。それらに代表される電磁エネルギーは、多くの可能性を秘めています。私たちのコースはその可能性をうまく使って、新しいエネルギーをつくれないか、便利な用途はないだろうか、といったことを研究しています。

気体を構成する原子や分子が、イオンと電子にわかれて自由に飛び回る状態を「プラズマ」といいます。これは気体・液体・固体に次ぐ「第4の状態」とも呼ばれます。いま、このプラズマを利用することで大きなエネルギーを作ろう、という核融合エネルギーのプロジェクトが世界の注目を集めています。日本・欧州・米国・ロシア・中国・韓国・インドといった国々が参加する大プロジェクトです。

世界の主要国家が参加する一大プロジェクト、そこに当コースの研究成果が採用されました。写真は、核融合エネルギーの実用化を目指し、フランスに建設中のITER(イーター)という新しい装置の模型です。私たちの研究はITERの心臓ともいえるプラズマを閉じ込める容器の、その壁に活かされています。これ以外にも、プラズマやレーザーにまつわる幅広い分野の研究を行っています。

この写真はプラズマを発生させる装置です。中で光っているのが見えますか?この装置ではプラズマを壁に照射することで、壁が崩れていく様子を観察できます。光の色もさまざまに変わるので、それらを観察してプラズマの性質を調べることができます。性質を理解した上でプラズマを有効活用することができれば、現在の発電方法を超える大きなエネルギーを得ることも可能になるのです。

プラズマは非常に大きなエネルギーを持っています。その大きさから、私たちの研究は「人工太陽を作る研究」といってもいいかもしれませんね。実際、太陽では常に核融合が起こりプラズマが発生しているんですよ。それと同じ核融合反応を起こせないか、という研究も行っています。将来、レーザー核融合炉が実現すれば、いまよりクリーンで安いエネルギーが実現するかもしれません。

大阪大学には、日本一大きなレーザー装置「LFEXレーザー装置」があります。これは世界最大の明るさを誇る装置でもあり、高速点火レーザー核融合研究の強力な武器となっています。2009年に完成したこの装置のおかげで、コストを抑えて核融合研究することが可能になりました。ちなみに核融合は海水で起こすこともできます。近い将来、水から電気を作る時代が来るかもしれませんね。

大きな装置をいろいろ紹介してきましたが、そこにはミクロの世界の研究も欠かせません。装置に使う部品の中には微細なものも多くありますし、レーザーを照射した部分を顕微鏡などを使ってその反応を確かめることもあります。スケールが大きな研究を支えているのは、日常で感じるふとした疑問やひらめき、そして非常に繊細な目に見えないような作業の積み重ねということができるでしょう。

プラズマやビームは、人の健康にもさまざまな影響を与えます。例えば、放射線が肉や野菜、また人体に対してどのような影響力をもっているか。現在、非常に注目を集めるこの分野を扱っている研究室では、実際に細胞に放射線を照射し、その変化を顕微鏡で観察したり、写真のようにガイガーカウンターを使用して、大気中や土中の放射線濃度を測定したり、という研究も行っています。

写真は髪の毛に放射線を照射し、どのように変化しているかを顕微鏡で観察しているところです。私たちの研究はこのように医療の分野にも広がっています。「工学部で医療?」と思う人もいるかもしれません。でも、先進電磁エネルギーを知り、扱うことができるようになれば、たとえば放射線を除去したり、よい方に扱うこともできます。よりよい未来を創る研究にボーダーは必要ないのです。

写真のように複雑な機械、あるいは世界の国が集まって技術と研究の成果を競い合う最先端の機械、さまざまな機械を使って、私たちは先進電磁エネルギーを研究しています。それはたとえば「小さな太陽を作る」といった、まるで夢のような、いつかSFで読んだような世界を実現する研究。明日の世界を切り拓き、この分野から未来をよりよいものに変えていこうとする、最先端の研究なのです。