船舶海洋工学科目では、地球の約7割を占める「海」および「船」の総合工学について学んでいます。国立大学としては最大級の船舶海洋試験水槽があり、長さ100m、幅7.8m、水深4.35mの巨大な水槽内で造波機による人工の波を発生させ、実際の海洋波をリアルに再現することができます。この水槽では、さまざまな船舶の極限海象下での安全性評価、船体周りの複雑な流場計測、次世代船舶の開発に関する実験を行っています。

曳引車に乗り込んで実験の様子を見てみましょう。オープンキャンパスでは、荒天航行時の事故を防ぐための横揺れ防止措置に関する実験を体験してもらいます。最大スピード3.5m/秒で走行できる曳引車には大勢で乗り込むことができ、実験とはいえ海上にいるような気分でワクワクしてきますよ。ちなみに、巨大な水槽内の水を入れ替えるには約100万円もかかるんです!

曳引車が水槽中央部まで動き、実験開始。造波機で荒天時の波をつくりだし、船首から波を受ける向波に遭遇した場合の船体動揺を再現します。模型は自動車運搬船で、波の周期が特別な条件を満たす場合には大きく横揺れを起こします。実際の洋上でも過去に自動車運搬船で50度、大型コンテナ船で40度もの横揺れを起こした事故例が報告されています。今回の模型実験でも約30度の横揺れを起こし、極めて危険な現象であることがわかります。

模型船の揺れをジャイロコンパスという計測装置でモニタリングしながら、横揺れを軽減させるためのアンチローリングタンクの効果を見てみましょう。U字型のタンクに水を注いでいくと、タンクの水が船の振動を吸収して揺れが収まっていく様子がわかります。これだけのサイズの船が大きく横揺れしていたのに、少しの水だけであっと言う間に揺れが収まるなんて、なんだか不思議で面白いでしょ?

こうした模型実験に加えて、コンピュータを用いた様々なシミュレーション技術を駆使して、船舶の安全性向上に努めています。資源に乏しい日本は、大量のエネルギー資源や工業資源を海外から船舶で輸入する必要があり、世界一の海運国として知られています。こうした水槽実験の成果が、日本の重要な海上インフラである船舶の海難事故防止につながり、社会貢献を果たしているわけです。

船舶に関する研究だけでなく、海洋環境を自動監視するロボットや、海洋資源探査用の自動航行ロボット、海洋作業用ロボットなどの研究開発も行っています。写真のイカロボットは、イカやカレイなど体の両側にヒレのついた生物を模倣しており、側ヒレを巧みに制御してやることで水中でも自由自在な動きを実現することができます。本物のイカさながらの動きは、見ていて癒されるかもしれませんね。

深海から噴出する重油やガスの自動追跡を行う海中ロボット技術、海面に漂流する重油塊の自動追跡を行う浮遊式ブイロボットの設計、検出センサーの特性試験、運動シミュレーターの開発なども行っています。ロボットから得られたデータは、重油拡散シミュレーションと連携して、海底生産施設まわりの定期的な環境モニタリングをはじめ、革新的な海洋防災システムへの展開が図られています。

他にも、あらゆる海洋波動場を水槽中に実現可能とした世界で初めての波浪水槽「アメーバ(AMOEBA)」を開発しています。これは任意の波動場を実現し、一定の特性をもつ波動場を長時間維持できます。実験内容に応じて水槽の形状そのものを変えることもできます。技術的に非常に難しい課題をクリアして完成したこの水槽は、水面に文字を描くこともできちゃう面白い水槽なんです。アメーバ水槽では、その特徴を活かして世界に先駆けたさまざまな研究が行われています。

このように、私たちは船と海に関するあらゆる研究・開発を行っています。巨大な試験水槽や世界初のアメーバ水槽を活用した高度な実験結果、物理則にもとづく数値シミュレーションによる解析結果にもとづき、より合理的な国際規則の策定や改正、省エネ・低環境負荷船舶の開発、新しい海上交通システムの提案など、よりよい技術を生みだしています。また、さまざまな水中ロボットの開発、洋上風力発電や海底資源の発掘など海洋の新しい利用法についても学べる本コースの学生は大きなやり甲斐を感じられることでしょう。

船舶海洋工学科目では高度な教育を求めてやってきた留学生が多数在籍し、大学院の授業が全て英語で実施されるなど国際化が進んでいます。国際的に活躍できる人間の育成に力を入れており、卒業生は海事産業だけに留まらず、官公庁、自動車、環境、製造業など幅広い分野で活躍しています。国連機関である国際海事機関、国際試験水槽会議などの国際舞台でグローバルスタンダードを主導している本科目で、みなさんも一緒に海と船の明日と未来について探求してみませんか?船舶海洋工学の奥深さは、大きな海原よりも深く限りない可能性に満ちています!