建築工学科目では、建造物の設計や構造に関するさまざまな研究・教育を行っています。計画に関する設計演習では、並行して学習する構造や環境の知識も生かしながら、さまざまな建築物の設計演習を行います。毎週計画案を発表し、さまざまな意見をもとに計画案を洗練させていきます。設計演習は、自然科学や工学だけでなく、人文、社会科学、芸術などの知識や柔軟な思考力、優れた感性などが求められます。

建築工学ではハード面の研究だけではなく、ソフト面の考察も重要です。フィールドワークによる建築・都市デザインの再考では、大阪大学吹田キャンパス周辺エリアのパブリックオープンスペースを活用し、新たな都市計画論を見通す試みなどが行われています。

建築工学科目では研究用風洞を利用し、風力エネルギー利用に関する研究や、建物周辺や室内の気流分析の研究、大気拡散・汚染の予測、長大構造物の耐風性の研究、流れの境界層や乱流構造の研究などを行っています。この施設は、学内の研究者だけでなく、他大学の研究者や一般企業の研究者にも開放しており、風に関わるあらゆる研究の拠点として大きな役割を担っています。

風洞内部は、奥から手前に向かって風が流れるようになっています。各種実験に対して最適な模型寸法と風速を選択できるよう、大小2種の測定胴を交換使用できます。測定胴は、長さ9.5mに断面1.8m×1.8mのタイプと、長さ3.5mに断面1.2m×1.2mの2タイプがあり、それぞれ可動式変流翼を旋回することにより、水平回流型と吹放し型に切り換えが可能です。送風機は風量72㎥/s、全圧70mmAqの大容量を誇ります。

たとえば、建築物の設計や都市計画を行ううえで、風の流れを調べることなどに風洞が使われます。高層マンションの室内を風がどういう流れで抜けるのか、滞留する場所はないかなどといったことを実験するために、風洞内で煙発生器やスモークワイヤーを用いて気流の可視化を行います。スモークワイヤーとは、流動パラフィンを塗布したニクロム線に電流を流すことでパラフィンを気化させ、流れの中にトレーサ(白煙)を注入するものです。このほか、風速計測や圧力計測などさまざまな測定機器を使った実験が可能です。

では、実際にビルの模型を風洞に入れて、風を当ててみましょう。建物周辺の流れや建物に入ってくる風の様子がわかるでしょうか?この風の流れや圧力や速度を測定し、どういう設計をすれば火災時に安全性を保てるか、風通しの良い部屋をつくるにはどんな作りにすべきかなど、構造設計から周辺環境と照らし合わせた都市計画にいたるまで、さまざまな検証ができます。つまり、研究用風洞は私たちの生活に深く関わりのある建物の計画に大きく役立っているのです。

それでは、今度は自分たちが風洞の中に入ってみましょう!自分の体で風を浴びれば、どれほど強い風が発生しているのかがわかります。風速10m/sの風を発生させてみると、服が乱れ、かなり強い力を受けます。これが設定最大風速の20m/sになると、人間でも飛ばされてしまう風速になります。ちなみにもうひとつの風洞では、最大50m/sというさらに強い風速を発生させることも可能です。

こうした風洞実験のほか、振動台による地盤改良の実験や基礎の挙動実験などが実施されています。地震時の地盤の動きの研究や、地盤改良による地震被害低減手法の研究など、建物模型を用いた実験により、建物の地震時応答を低減させる改良地盤の開発なども行っています。つまり、建物そのものの設計に関することだけでなく、建造物を立てる地盤そのものの改良についても多くの実験データを蓄積しているというわけです。

また、鉄骨と繊維補強コンクリートのみで構成されるCES合成構造システムの研究により、安価で簡単な構造ながら耐震性に優れたシステムを生みだす試みや、長期耐用型中高層木質ハイブリッド建築構造システムの開発、RC部材の曲げやヒビ割れ発生位置に関する考察、ヒビ割れを有する鉄筋コンクリート部材の高経年化評価に関する研究など、汎用耐震実験装置を用いた実験・研究も実施しています。

さらに、快適で健康的な居住空間や、自然エネルギーを利用した環境調和建築、省エネルギー建築の実現を考えた建築や都市における熱・空気・光・音などの諸環境を対象とした幅広い分野の研究が行われています。その一貫として、快適な室内のにおい環境についての研究も積極的に実施され、何かのにおいに絶えずさらされている日常の生活空間に近い場所で、嗅覚の順応過程に関する主観評価が実験されています。このように、あらゆる観点から建造物と都市計画を総合的に捉えた建築工学科目は、時代のニーズを捉えた未来の建物づくりと街づくりをリードしているのです。