在学生・卒業生インタビュー

2026/01/08在学生

ロボットによる実験自動化で新しい研究開発の姿をめざす

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「応用自然科学科」「応用理工学科」「電子情報工学科」「環境・エネルギー工学科」「地球総合工学科」の5つの学科からなる大阪大学工学部には、めっちゃ個性あふれる多彩な人材が集まっています。
大学での学びやこの学部を選んだ決め手、入学してよかったことなど、中島 優作 さんにお話を伺いました。

物理学系専攻 応用物理学コース
先端物性工学領域 小野研究室 
博士後期課程3年 中島 優作さん

研究を続けたい一心で、博士後期課程から阪大に進学

高専から総研大へ進学し、その後、博士後期課程から阪大へ。
はじめての大学で毎日とても新鮮でした、と振り返る中島さん。

地元、北海道の旭川工業高等専門学校に7年間通って学士の学位を取得した後、総合研究大学院大学(以下、総研大)に進学しました。高専在学中からずっと、「ロボット」と「材料」を組み合わせた研究をできる場所を探していましたが、そんな時、当時、総研大におられた小野先生(現阪大教授)が学校説明会に来られ、ロボットを活用する実験にも興味があるという話をされていたのを聞いて、ここしかない!と思い、総研大に進学しました。充実した毎日を過ごしていましたが、修士課程の2年間ではロボット実験の一部しかできないという課題意識があり、自分の研究に近いことができそうな企業も見つからなかったので、もっと研究を続けたいと思い、博士後期課程から大阪大学工学研究科に進学しました。

無人ラボが実現すれば、極限環境での実験も可能になります

いつも実験に使っている相棒の全自動粉砕・混合ロボット。
プログラミングで動作を指示したり、人の動きを覚えさせています。研究室ではすでに10台以上が稼働中!

フレンドリーな学生が多くて研究室にはすぐになじめましたが、そもそも小野先生がとてもフランクな先生で、学生が質問しやすい和やかな雰囲気をつくってくださっています。後輩に聞いても、この研究室の雰囲気が好きで入ってきたという学生は多いです。小野研究室では「工学から新しい物理を見出す」をモットーに、機械学習や統計的推論、ロボティクスを使った次世代の物性研究の実現に取り組んでいます。その中で僕が行っているのが、ロボットを活用したメカノケミカル反応に関する研究です。「メカノケミカル」とは、粉砕や衝撃、摩擦などの機械的エネルギーによって物質の結晶構造や化学的性質を変化させる現象です。

高校生向けに説明するならば、料理に例えるとわかりやすいかもしれません。例えば、ケーキの生地にベーキングパウダーを入れて焼くと膨らむのは、熱を加えることによって中で炭酸ガスが発生して生地が膨らむからですが、毎回同じように作るのは難しいですよね。同じようなことを化学の世界でもやっていて、料理と化学はとても似ていると思います。ただ、僕らがやっているのはサイエンスなので、毎回同じ結果になってもらわないと、議論ができません。
そういった部分で、今の化学には限界があると感じていて、その要因のひとつである「手作業での実験」という部分を、ロボットに担ってもらえれば、ばらつきを抑え、効率の良い研究を進められるだろうというのが、今の僕の研究になります。ロボットによる実験の自動化、無人ラボが実現すれば、人間が作業できないような極限環境での実験も可能になります。これは、研究者とロボットが協調して進める新しい研究開発の姿ともいえます。

週末はお菓子作りで気分転換!マカロンは激ムズです

お菓子づくりが趣味という中島さん。写真は最近つくったマカロン

研究の合間の息抜きは、出張先でちょっと美味しいものを食べたり、景色を楽しんだりしています。週末のお菓子作りも良い気分転換になっています。これまでで一番難しかったのはマカロンですね。卵白を泡立てて砂糖やアーモンドの粉を混ぜて焼くんですが、メレンゲの泡をつぶしながら生地の固さを調整する「マカロナージュ」という作業次第で、マカロンの膨らみ方が大きく変わるんです。他のスイーツは何度か練習すれば上手く作れるのに、マカロンは激ムズで、いまだ納得いくものができていません(笑)。

世の中の方向性と僕たちの方向性がリンクしてきた

国際学会で発表する中島さん

小野研究室は開設6年目の新しい研究室ですが、これまでにはないような分野横断の研究をしていて、学外との関わりもあります。僕自身、AIやロボットを用いて、研究開発の自動化・自律化を推進する専門家の集まり「一般社団法人ラボラトリーオートメーション協会」のメンバーにもなっていて、毎月勉強会を開いています。最近は協力してくださる大学や企業が増え、毎回150名ほどの参加があります。

そもそも、僕たちの研究分野が注目されるきっかけのひとつが、2020年に学術雑誌ネイチャーに掲載された「A mobile robotic chemist」という論文なんです。実験室を自ら移動できるロボットアームを用いて、人間が行っていた実験をロボットに置き換えるというものですが、AIを活用して人間が行うよりも効率的に行えるというのと、当時はコロナ禍ということもあって、人が実験室に行かなくても実験できる未来が来るのではと、すごく話題になりました。

そんな業界の盛り上がりと地道な活動もあって、昨年あたりからどんどん忙しくなってきました。学会やシンポジウムでの講演など、発表の機会も増え、世の中の方向性と僕たちの方向性がリンクしてきたなという実感はあります。今年2月に(公財)大阪産業局主催のビジネス創出プログラムでボストンに訪れた際には、ハーバードメディカルスクールの教育病院であるブリガム・アンド・ウィメンズ病院放射線科の波多伸彦先生のラボを訪問し、この秋からはハーバード大学へ留学することになりました。

波多先生は病院の方々と一緒に医療ロボティクスの研究をされていて、そのラボには処置室や手術室まであるんです。波多先生をはじめ、様々な分野の方々と一緒に、実際の臨床応用まで含めた研究ができるのをとても楽しみにしています。

未来の新しいサイエンス、テクノロジーをつくろう!

全自動粉砕・混合ロボットの動きを解析中。
様々な分野の学びを融合させることができる今の研究環境がとても魅力的と語る中島さん。

高専生の良さは「まず手を動かしてみること」だと思います。もちろん、ざっくりとした方針は事前に考えていますが、手を動かしてわかることの方が多いので、色々考えて悩むより、まずは1回作ってみてから考えます。高専から大学院に入学する場合、研究分野が変わってしまうこともあると思いますが、手を動かして学んだ経験は大学でも役立つし、自分の強みにもなるので、自信をもって進学してほしいです。地元の地方大学を選ぶ人が多いですが、色々な研究内容を見てから決めるといいかなと思います。

阪大工学部にも面白い研究がたくさんありますが、応用物理学コースは、新しい産業や学問を創るための分野で、物理、数学、化学、バイオなどの分野にとらわれることなく、これらを融合した新しい分野の創出をめざしているところが、とても魅力的で気に入っています。ぜひ一緒に未来の新しいサイエンス、テクノロジーをつくっていきましょう!

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