在学生・卒業生インタビュー

2020/02/20OB・OG

素晴らしい環境で切磋琢磨し、修論発表後は大号泣!

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「応用自然科学科」「応用理工学科」「電子情報工学科」「環境・エネルギー工学科」「地球総合工学科」の5つの学科からなる大阪大学工学部には、めっちゃ個性あふれる多彩な人材が集まっています。
大学時代のお話や現在のお仕事についてなど、卒業生の市橋 春菜さんにお話を伺いました。

応用自然科学科卒
生命先端工学専攻 物質生命工学コース
生命機能化学領域(伊東研究室)修了

現 花王株式会社 研究開発部門
市橋  春菜さん

徹底したものづくりの姿勢に感動し、研究者の道へ

阪大工学部で研究の楽しさを学び、現在は花王株式会社の研究員として、洗剤の原料である界面活性剤の性質を調べ、基礎研究と商品開発の橋渡しをしています。
食材そのものがもつ味だけでなく、加熱したときの味の変化なども知っておくことで、よりおいしい料理をつくることができるのと同じで、界面活性剤もその化学構造からだけではわからない性質を解明することが大切です。実は、界面活性剤の外見である分子構造からだけでは、どれだけの洗浄力、泡立ちがあるかは予想もできません。界面活性剤は、水中で予測できない集合体を形成したり、意外な機能を発揮したりします。そのような性質を解明・制御することで、より良い機能性素材を開発し、新商品の開発に貢献できるよう、日々研究に取り組んでいます。約10名の研究チームですが、みんなそれぞれに研究テーマが異なるので、お互いに情報交換したり、励まし合ったり、同じ目標に向かって進む仲間という感じで、とても仕事のしやすい職場です。
就職先に花王株式会社を選んだのは、同社の澤田社長のお話を聞いたのがきっかけでした。澤田社長は阪大工学部の卒業生で、応用化学専攻の集まりで講演をされた際、製品誕生の裏にある研究について情熱的に語っていた姿がとても印象的でした。その中でも「サイエンスに基づいた本当に良いものしか世の中にださない」という徹底したものづくりの姿勢に感動し、私もこの会社に入って研究をしたい!と強く感じ、入社を希望し、今に至ります。

わかったふりをせず、どんなことにも全力投球!

「いつか「人生の相棒」と呼べる素材や製品に出会えれば幸せです」と市橋さん。

会社に入社して約3年。まだまだ若手なので、とにかく日々勉強中ですが、わかったふりをしてはいけないと、常々心がけています。自分の知らない未知の分野や苦手な業務などに対しても意識的に壁をつくらず、どんなことにも全力で取り組み学びたいと思っています。
予期していなかった新しいことを発見したときは、研究者として素直に嬉しいのですが、その発見が製品に結びつく機会というのは決して多くありません。そんな中、ひとつの製品、素材に人生をかけて挑んでいる先輩方の姿は本当にかっこよく、学ぶことも多く、めっちゃ憧れます。いつか私も、自分の生涯に刻み込まれるような「人生の相棒」といえる素材や製品に出会えることができれば幸せだなと思いますし、自分が関わった製品が世の中に出て、お客様の生活や社会が少しでも快適になればと思っています。

めっちゃ勉強して、めちゃ遊んだ阪大工学部時代

阪大工学部のメンバーと大学3年生のときに行ったイタリア旅行。一番右が市橋さん。

高校生の頃は将来の夢が漠然としていたものの、ものづくりに携わりたいという気持ちが強くあったので、その夢をかなえるなら工学部かなと思っていました。いろんな大学を調べていくうちに、阪大工学部の応用自然科学科は、入学後の1年間は学科共通の基礎を学び、その後、精密科学、物理、化学、生物からコースを選ぶことができることを知りました。もともと、数学はちょっと苦手だったのですが、物理も化学も生物も好きだったので、それなら応用自然科学科に入って、あとで本当にやりたいことを見つけようと、阪大工学部を受験しました。入学後は、化学実験がとても楽しかったので、応用化学コースを選び、4年生になって伊東研究室に配属されてからは、さまざまな酸化反応の触媒である金属酵素の機能について研究していました。触媒とは、化学反応においてそのもの自身は変化せず、反応速度を変化(促進)させる物質です。

そんな触媒のひとつである酵素に、ある金属を埋め込んだらもっと強い触媒になるのではないかと考え実験していたのですが、なかなかうまく取り込めず。ところが、超高熱菌由来のタンパク質を使って実験してみると、どんな金属でも取り入れられることを発見し、いろんな金属を使って触媒反応を試していました。

在学中は、めっちゃ勉強して、めちゃ遊んで、休む暇がなかったです。試験前に友達と図書館にこもって夜遅くまで勉強したのは、とても良い思い出ですし、その後、試験が終われば、打ち上げだと言って、みんなで朝まで飲み明かしたことも良い思い出です(笑)。サークルは子供の頃から続けていた水泳と父の好きだったテニス、アルバイトは塾講師やスーパーやパン屋さんのレジ、そのほかにも、海外旅行、下宿での一人暮らしなど、めっちゃたくさんの経験をしました。

「What’s new?」常にアンテナをはって楽しもう!

3年ぶりに伊東先生と再会した市橋さん。懐かしさと嬉しさに思わず笑みがこぼれます。

一番思い出深い場所といえば、やはり、3年間お世話になった伊東先生の研究室です。ただ必死に勉強をするだけが研究ではなく、誰も分からないことを発見し確立していくのが研究であり、正解はないことの難しさ、おもしろさを教えていただきました。伊東先生はいつも、「What’s new?」と言いながら研究室を歩き回っておられ、正直、(そんな簡単に新しいことなんか見つからないよと)耳の痛い時期もありましたが(笑)、その言葉には「常にアンテナをはり、新しいことを見つけ、楽しみなさい」というメッセージも込められていたのかなと思います。
思うように研究が進まず、成果も出ず、辛い時期もずいぶんありましたが、それ以上に得られたことが多く、修士論文発表会後には、「3年間の集大成が終わったんだー!」と、感極まり、大号泣してしまいました。研究のおもしろさを教えてくださった、伊東先生、藤枝先生(現在は大阪府立大学准教授)は、生涯の恩師です。

研究は楽しい!と教えてくれた阪大工学部

久しぶりの研究室訪問で懐かしそうにグローブボックスにふれる市橋さん。「やっぱりここが一番落ち着きます」。

ひとことで言うと、「めっちゃ頑張り屋さんが多い!」というのが阪大の特徴だと思いますが、私も、周りの仲間と切磋琢磨する中で、ずいぶんと根性を鍛えられました(笑)。6年間の学びで身についた、どんなことに対しても深く学ぼうという精神、とことん追究する姿勢は、今の仕事にもめっちゃ役立っています。
そして何より、阪大工学部に入って一番良かったなと思うのは、現在の仕事でもある「研究を楽しい」と心から思えるようになれたことです。この大学の卒業生であることを誇りに思っていますし、阪大工学部には、心から尊敬できる先生、先輩、そして一生涯の友達となる優秀でユニークな学生が待っています。受験生の皆さんにもぜひ、この素晴らしい環境で、切磋琢磨し、かけがえのない経験をたくさんしてもらいたいです。

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