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2022/10/21研究成果

【プレスリリース】昆虫細胞はなぜ室温で接着するのだろう? ―生きた細胞の接着界面を可視化する新システムで匂いセンサー応用に期待―

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 松﨑賢寿助教(工学研究科附属フューチャーイノベーションセンター)、照月大悟助教(東北大学大学院工学研究科ファインメカニクス専攻)らのグループは、2022年10月6日(木)に米国科学誌「Journal of Physical Chemistry Letters(American Chemical Society)」(オンライン)に成果発表しました。

“Low Surface Potential with Glycoconjugates Determines Insect Cell Adhesion at Room-Temperature.”

図1(左):匂いセンサーデバイス(左上)の中にある昆虫細胞の接着メカニズム(右上)
下段は 2 人の責任著者と大阪大学で貢献してくれた学生。
図2(右):センサー表面に吸着する昆虫細胞が溶液中の匂い物質を敏感に感知して応答している様子を示している様子をイメージしたもの。本誌の表紙(Supplementary)を飾りました。

 私たち哺乳類の細胞は体温よりもはるかに低い室温環境下(20℃)では生きていくことができません。一方で、昆虫細胞は過酷な環境下でも生育できる強靭さを有しながら、遠くにいるメスの匂いを知覚する鋭敏なセンシング性能を有しています。照月助教は昆虫細胞の巧みな性能を生かして、災害時のような過酷な環境下でも、ヒトの匂いを鋭敏に感知する究極のセンサーを開発するため研究を進めています。
 しかし、センサーの核となる昆虫細胞は生きているため、どのようにしてセンサー表面に接着し、その後のセンサー機能を最大化するのか?という問いは未解明でした。

 そこで本研究では、松﨑助教が開発を進める顕微鏡法を用いると、センサー表面との反発力の根源となる細胞表面の体毛(糖の鎖)が非常に小さく、かつ静電的な反発力が少ないことを世界に先駆けて明らかにしました。

 これまでに、昆虫細胞の匂い受容体として、実に100種類以上が同定されており、災害でも要救助者を探索するドローンセンサーの中心に使われる未来もそう遠いものではありません。

 以上の成果は、松﨑賢寿助教、照月大悟助教に加え、佐藤奨真さん(工学研究科特別研究学生)と吉村侑大さん(工学研究科物理学系専攻応用物理学コース博士前期課程1年)らのチームMUSHIの若手理工連携によって達成されています。 

 松﨑助教が所属する応用物理学コースでは、化学、物理、生物などの幅広い学問に興味がある学生を募集しています。推薦入試などもありますので、是非コースHPにお立ち寄りください。

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応用物理学コースHP

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